英語留学大国目指すフィリピンの日系学校の努力 オフ・オンライン授業で工夫を凝らし日本人を呼ぶ

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それでも業界全体として復活へ向けた期待は大きく、各校は受講生の受け入れ拡大に知恵を絞っている。

QQEnglishはITパークの入居ビルの外に点在させていた360室の寮を手放し、ビル内の3フロアに日本のカプセルホテル仕様の寮を作った。計936室に教師と受講生を収容する。これまでは寮と食事、授業をパッケージで売っていたが、オフもオンラインも授業単価をそろえ、寮費や食事代は選択制にした。受講生は宿泊先に寮を選ぶか、ホテルや近隣のコンドミニアムを宿泊サイトで予約する。旅行業的な部分を割愛して、「英語を売る」ことに特化する事業モデルにした。

プールやジムが完備するIDEA CEBU校の新校舎。2022年中に移転の予定だ(写真・柴田直治)

受講生は以前、月曜から授業をはじめ週単位で滞在する形が標準だったが、再開後はいつ来て、いつ帰ってもよい形としてワーケーション用に空港風のラウンジも備えた。

MeRISEは社会人、ビジネスマン向けのプログラムをより強化した。プレゼン力向上など1人ひとりの目的に合わせたカリキュラムを組み、専任の教員がつく。たんに英語を教えるだけではなく、受講生の進捗を見守り叱咤激励するコーチングのコースを充実させた。発音だけに絞って集中的に鍛えるコースも新設した。

「コスパ最強、スタディ&エンジョイ」を掲げるIDEAは、受け入れ拡大を見越して2022年末までに市中心部の新校舎に移る。7階建ての2棟を占有し450人を収容、プールやジムを備えている。価格を他校より抑え、英語学習だけではなく、バケーションも楽しんでもらう工夫をして学生ら若者の呼び込みを図る。受講生の多国籍化をめざし、タイやベトナム、中東、台湾からの招致にも力を入れている。

「もう海外に出るしかない」

復活へ向けて好材料もある。航空券価格の高止まりや円安による授業料、滞在費の上昇は痛いが、英語留学のライバルであるアメリカやオーストラリア、イギリスとの価格差はむしろ広がっている。

オンライン慣れはあるにしろ、実際に教師と対面したい、現地の雰囲気を味わいたい、海外旅行をしたい、という欲求が高まっていても不思議はない。

「何よりこの急激な円安を機に『日本はやばいぞ。海外に出るしかない。外貨を稼げるようにならないと』という切羽詰まった思いが日本の若者の間に広がっている」と斉藤会長はみる。その空気こそが、セブ島留学の復活を後押しすると楽観している。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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