英語留学大国目指すフィリピンの日系学校の努力 オフ・オンライン授業で工夫を凝らし日本人を呼ぶ

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感染は拡大の一途をたどり、短期間で終わると期待されたさまざまな規制は年を越えて長引いた。さらに2021年12月、セブを台風オデットが襲い、島全体に甚大な被害が出た。校舎が半壊した学校もあった。

結局、受講生を再び受け入れるまでに2年以上の時が流れた。それでも2022年11月現在、再開にこぎつけた日系の学校は数校に過ぎない。

私が訪ねた日系の3校、つまり再開を果たした学校はいずれも留学(オフ)の休業中、オンライン英会話への移行で命脈を保った。

もともとオンとオフの売上が半々だったQQEnglishは、1300人の教師を1人も解雇せずにオンライン専従で営業を続けた。2020年の売り上げは留学の消失で以前の半分になり、数億円の赤字となったが、日本の巣ごもり需要もあってオンライン受講生が毎月大きく伸び、2021年には留学分の損失をカバーできるようになった。2022年には、日本人向けオンラインのクラス数がコロナ禍前の4倍になった。

留学生受け入れ再開への努力

IDEAは強みだった学校や法人へのオンライン授業を強化して乗り切った。MeRISE はパンデミックの直前にオンラインの予約システムの構築が終わっていたことが幸いした。同校への留学経験者を中心にオンラインの受講生を増やして軌道に乗せた。立ち上げたクラウドファンディングにも受講生らの協力があり、生き延びることができた。

IDEAセブ校の授業風景(写真・柴田直治)

3校はいずれも留学生向けの宿泊施設を教師用の寮に転用し、ロックダウン中もオンラインの授業を続けた。

オンライン英会話も事業者が乱立気味で競争は激しい。専業事業者の多くはフィリピンの大学生を雇い、彼らの自宅から授業を行う方式をとっている。これに対して留学を受け入れてきた事業者は教師を手元に置いている。授業の品質管理を徹底させやすい利点を生かしてオンでも実績を伸ばした。

日本とフィリピン両国で出入国制限が緩和され留学への障害はひとつクリアされたものの、本格回復にはまだ遠い。コロナ前には週30便以上あった日本との直行便が2022年11月現在、成田と結ぶ3便しかないことが最大の壁となっている。

便が少ないうえにサーチャージの高止まりで、以前に比べて航空運賃が高くなった。さらに授業料などをドル建てにしている学校では円換算では相当な値上がりとなっている。

コロナ禍で伸びたオンライン授業の経験により、現地に出向かなくてもマンツーマン授業を受ける環境が整ったことも、留学事業者にはハンディキャップとなるかもしれない。

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