終幕!トワイライト劇場は、やはり凄かった 豪華寝台列車の旅が、25年の歴史に終止符
厚意から室内を見せたら、しつこくビデオに撮られたこともあったという。運行終了が発表されて以来トワイライト人気は過熱しており、一部に行き過ぎがあるようだ。
14 時50 分、南千歳を発車してまもなく、食堂車「ダイナー・プレヤデス」でティータイムが始まった。メニューはドリンクのほかはダークチェリーのクラフティ(焼き菓子)のみ営業時間も15時30分ラストオーダーと短い。クルーはこの後すぐにディナーの準備に入らなくてはならず、まさに分刻みのスケジュールだ。
61回目の挑戦でようやく獲得
食堂車は全28席。1989年、運行開始当時の資料を見るとバブル時代らしいきらびやかな印象だったが、年月と改装を経た今は渋みが加わり、程よい豪華さが心地よい。
相席となったのは、福岡県から来たという20代の会社員2人。以前乗った寝台特急が忘れられず、毎朝出勤前に始発で家を出て、20もの駅に10時発売となるトワイライトのチケットを依頼して回った。3日間、延べ60カ所でチャレンジしたが、すべて失敗。諦めきれずに、通りかかった中津駅でふらりと窓口に寄ったところツインルームが取れてしまったそうだ。「中津駅でトワイライトを売るのは初めてだったそうで、駅員さんのほうが感動していました」
列車は内浦湾沿いを走り、16時33分洞爺駅を発車。冬至が近く、すでに辺りは夜の装いだ。洞爺を出ると、翌朝4時40分着の新津まで乗客は乗り降りできない。
この日はほぼ満席だが、ロイヤルが1室空いている。直前にキャンセルが出て、そのまま買い手がつかなかったのだろう。チケットを確保したものの、仕事な どの都合がつかず、直前に払い戻すケースが意外と多い。
ディナーは、17時30分と19時30分の完全入替制。今日は19時30分の回を予約してある。メニューは、ドリンクのほかフランス料理のフルコース(1万2300円)。28席×2回転で56人分が提供される。
通常3カ月ごとに変わる料理のレシピは、神野友哉料理長が考案し、伊福部雅司担当部長と共同で仕上げている。時間のかかるところはあらかじめ仕込んでおくが、煮る、焼く、ソースを作るといった調理はすべて車内の狭い厨房で4人のコックが行っている。調理器具の位置やコックの動きまで計算され、限られた空間と時間を最大限に活用する。これも25年間で培われたノウハウの賜物だ。
19時52分、列車は青函トンネルに入った。12月のメニューは「お祝い」がテーマ。「南アフリカ産伊勢海老のパリ風」や「黒毛和牛のローストビーフと冬野菜のオーブン焼」といった料理が並ぶ。
「びっくりしました。一昨日泊まった洞爺湖ウインザーホテルにも負けないくらいおいしいですね」
そう語ったのは、九州から乗車を果たした土田瑞代さん( 61 )だ。
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