終幕!トワイライト劇場は、やはり凄かった 豪華寝台列車の旅が、25年の歴史に終止符
「列車の中ですから、ある程度は割り引いて、と思っていたんです。そうしたらあんまりおいしくて」
ツアーでの参加だが、10月に新聞広告を見て即電話したところ、運よくいちばん乗りでロイヤルが取れたという。娘の中野知絵さん(37)を誘い、親子水入らずの旅だ。
デザートの焼き菓子が出る頃、藤井マネージャーが客席中央に立ち、小さなアトラクションが始まった。
「フランスでは、焼き菓子に陶器を入れて、見つけた人が王様というお祝いの遊びがあります。本日は皆さんのデザートに、ひとつだけアーモンドを入れました。当たった方には、トワイライト特製のオープナーを差し上げます」
オープナーを当てたのは、名古屋から姉妹で来た吉良祐子さん(49)だ。やはり新聞広告で見たツインルーム利用で、姉の北川浩子さん(54)とツアーに参加した。申し込んだのは北川さんだ。
「夕刊の広告で見た翌朝に電話したら、もうキャンセル待ちでした。でも11月にキャンセルが出たって連絡がありまして。ディナーなんて、数日前に取れたんですよ」
取れないと言われるトワイライトエクスプレスのチケットだが、諦めない人には届いているのである。
「おめでとうございます。それでは、王様にはこちらの冠をかぶっていただきます。ちょっと、皆さんのさらし者になってくださいね」
藤井マネージャーのジョークに、場がなごむ。ただ豪華なだけではない、手作りの温かさもトワイライトエクスプレスの大きな魅力だ。
「旅の出会い」を体験できる貴重な22時間
目覚めると時刻は6時20分。朝の車内放送が始まっている。間もなく、直江津に到着。列車はJR西日本の管内に入り、車掌による車窓ガイドの放送が始まる。右に親不知海岸、左に白山、立山連峰と、北陸地方らしい絶景が続く。JRが、北陸新幹線の開業と同時にこうした絶景路線を手放してしまうのは惜しい。
7時半からの朝食を済ませてサロンカー「サロン・デュ・ノール」を訪れると、大阪車掌区のクルーが手作りしたというスタンプを求めて、長蛇の列ができていた。専用の台紙に季節のイベントや機関車のスタンプを16個も押す手が込んだもの。やがて2人の車掌が現れ、記念写真タイムとなった。
この頃には乗客の多くが顔なじみになっており、サロンカーではあちこちで雑談が弾んでいる。三重県四日市市から来た古賀愛子さん(37)は、息子の大遥くん(2)と各地の列車を乗り歩く「ママ鉄」だ。
「子連れなので、敷居の高い雰囲気だったらと不安でしたが、皆さん気さくな方ばかりで安心しました」
こうした車内での触れ合いを楽しめる列車も、今では貴重な存在だ。
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