開発の若きカリスマはビル・ゲイツの後継者か この人に聞く

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開発の若きカリスマはビル・ゲイツの後継者か

700人の部下を率い重要製品の開発を一手に取りまとめる32歳。今でも自らコードを書くという根っからのプログラマーにして、「ポスト・ビル・ゲイツ」の最右翼ともされるスコット・ガスリー 、マイクロソフト・ジェネラルマネージャに聞く(週刊東洋経済2008年2月9日号より)

――グーグルやフェイスブックなど若い経営者が率いるIT企業の台頭についてスティーブ・バルマーCEOに聞いた際、「当社にもスコット・ガスリーがいる」と自信たっぷりに答えていました。

 それは光栄なこと。バルマーCEOは、誰よりもデベロッパー(マイクロソフト製品を利用する社外のソフト開発者)との関係を重視している。私はデベロッパー向けプラットフォームの開発責任者。だから、私の名前を挙げたのではないか。

――1997年にマイクロソフトに入社して以来、異例のスピードで出世しています。

 大学時代にはインターンでアップルやマイクロソフトで働き、ベンチャーも経営していた。卒業後、どうしようか迷っていたところ、ビル・ゲイツから勧誘メッセージがついたバスケットボールを贈られて感激し、マイクロソフト入社を決意した。プログラマーとしてウェブ開発プラットフォーム「ドットネット」のプロトタイプ開発を担当し、1年半後にはマネージャに昇格した。同じようなスピードでマネージャになった例をほかには知らないので、確かに異例かもしれない。その後、多くのウェブ関連製品の開発を担当し、今では700人の開発チームを率いている。

――自身のブログで、開発ツールの使い方を説明するなど、デベロッパーとの対話を大事にしているようですが。

 今回、最新の開発ツール発売を機に中国、韓国、日本に初めて来た。主な目的は、デベロッパーの皆さんと直接会って対話をすること。北京では、車で9時間もかけて講演会場に来たという方がいた。皆さん優秀で大きな刺激を受けた。これからは、もっと来るようにしたい。開発プラットフォームには、無償ソフトを提供するオープンソースなど多くの競合がある。そうした中で、マイクロソフトの強みは多くの機能を統合的に提供し、一つの言語で全体を構築できるところにある。デベロッパーにとって最高のツールを提供することがマイクロソフトのゴールだ。

――グーグルなど他社からの引き抜きもあるのでは?

 ほかではマイクロソフトと同じことはできないので転職は考えていない。マイクロソフトでは、自分たちが開発したプロダクトによって人々の生活を変えることができる。

――今年6月末にビル・ゲイツ氏が引退することもあり、後継者とも目されています。

 ビルは引退するわけではない。7月以降も働く時間の2割をマイクロソフトに割くので、普通の人以上に働くということだ。思考が戦略的で、技術も熟知しているゲイツはマイクロソフトの中心。それは、ずっと変わらない。
(撮影:尾形文繁)

Scott Guthrie●1975年生まれ。デューク大学を卒業し1997年にマイクロソフト入社。開発チームを率いる最年少のジェネラルマネージャ。同社の次代を担うキーパーソンと目されている。大学バスケのファン。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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