「親との関係」大人になっても悩む人がハマる心理 お互いの心が「癒着」してしまう事は何が怖いのか

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重度の癒着で、親の心と子どもの心が1つに重なり合って、まるで一心同体のようになっているケースはそう珍しくありません。

そんなときに起こる問題は、親が子どもに不安を感じ、その不安を生み出したのは親自身なのに、子どもから与えられた不安だと錯覚を信じ込み、安心に変えたくて『子どもの領域』に侵入して、心を傷つけてしまうということです。

子どもの領域とは、子どもの価値観で選び、子どもの好き嫌いという感情で幸福感のある選択をし、どんな結果であっても子ども自身の責任として受け入れる生き方、誰からも侵入されない子どもオリジナルの人生そのものです。

他人が住んでいる家に勝手に上がり込んで、住人が欲しがっていない物を押しつけ、住人が大事にしているものを奪い去る。

もしその住人だったらどんな気持ちになるでしょうか?

「そんなことをされたら警察呼ぶよ!」と思う人は、とても健康的な心理状態です。

でも、これと同じようなことが癒着している親子関係では実際によく起こります。しかも、嫌だと言えずに我慢して受け入れている子どもはとても多いです。

癒着が重度の親は子のコントロールが強い

子どもの人生は子どものものなのに、癒着が重度の親はまるで親自身の人生かのように子どもをコントロールしようとします。そうするのは、子どもの人生が悪ければ、親の人生まで悪くなるような錯覚があるからです。

親が子どもを見ていて不安に感じるのは、子どもに生きる力がなくて、失敗するはずだと無意識的に決めているからです。だから、「あれはダメ!、こうしろ!」と言って、親が安心を感じられる状態を作ろうとします。

親の心のなかでは、子どもを見て感じる心配は、子どもが感じさせたものだと思いこんでいます。

そしてこんなことを言います。

「親に心配をかけさせるな」

「あなたがちゃんとしないから親は不安になるんだ」

「親に迷惑をかけないで早く一人前になってほしい」

こんなことを言いながら、すでに大人になった子どもに対して、いつでも親の考えを押しつけ、親が不安に感じれば否定し、いつまでも自立を認めようとしません。

こんな状態が幼少期から大人になるまでずっと続いていれば、子どもの価値観にも歪みや偏りが生じてしまいます。

子どもの領域の中で決めていいことなのに、親に判断を委ねてしまっている子どもたち。
自由に行動しようとすると、恐怖心と罪悪感で身動きが取れなくなる子どもたち。

気づかないうちに親の言葉が正しいはずだと信じ込み、自分の気持ちに蓋をして生きるようになってしまいます。

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