三重の老舗米屋が手がけた「カレー専用米」の正体 無印良品のレトルトカレーに合わせてみたら…

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「そこでクミンを入れてみようかと。通常、クミンシードは粉末にして煮込んだり、油で炒めたりして使うのですが、藤巻さんでさえもご飯と一緒に炊いたことはないとのことでした。結果、想像以上に本格的な味わいに近づきました。また、普通のお米のように炊く前に研ぐと、クミンの風味が抜けてしまうため、無洗米にしました。より手軽に楽しんでいただけると思います」(石川さん)

無印良品のレトルトカレーと合わせてみた

レトルトカレーはご飯さえあれば簡単にできるので、筆者は週末のお昼によく食べる。そこで「カレーのための米」を持ち帰って試食をさせてもらうことに。お米と合わせるのは、石川さんが試食する際に使っていたという無印良品の「素材を生かした おうちのこだわりビーフカレー」。

パッケージを開封して、お米を炊飯器に入れると、クミンの香りが鼻孔をくすぐる。これがご飯と炊くと、どのように変化するのだろうか。気になって仕方がない。

炊飯器からご飯が炊き上がったことを知らせる音が聞こえた。ワクワクしながら炊飯器の蓋を開けると、湯気とともにクミンの香りがふわっと広がった。エスニック特有のきついものではなく、ほんのりとやさしい感じの香りである。

炊きたての「カレーのための米」。全体的に薄茶色っぽい(筆者撮影)

見た目も普通のお米とは違っていた。クミンを加えているからだろうか。全体的に薄茶色っぽい。炊きたてのご飯を杓文字でほぐすと、パラパラ感が手に伝わってくる。このビジュアルといい、炊き上がり具合といい、いかにもカレーに合いそうだ。

お皿にご飯をよそって、カレーをかける。カレーとご飯の香りが一つになる瞬間である。すでにこの時点でこれまで食べていたレトルトカレーとは完全に一線を画している。石川さんが言った「ワンランク上げる」がもっとも的確な表現だと思う。

そして、いよいよ実食。カレーをたっぷりと纏わせたご飯を口に運んでみる。ん?クミンの香りとともにカレーのスパイシーな味わいとご飯そのものの甘み、そしてもち麦のプチプチとした食感が口の中で複雑に絡み合う。それぞれがバラバラになっているのではなく、見事に調和がとれているのだ。鼻から抜ける香りが何とも心地よく、あっという間に平らげてしまった。

無印良品の「素材を生かした おうちのこだわりビーフカレー」は、ごろっとした具材とまろやかな辛さが特徴だが、バターチキンやキーマカレーなどでも試したくなった。カレーが替わるとまた違った味わいになると思う。
「将来的には卵かけご飯や丼もの、チャーハンなどあらゆるご飯ものの専用米を作って、店の棚にずらっと並べてみたいと思っています。ギフトとしてもご利用いただけますし、その日の献立に合わせてご飯を選べるというのも楽しいですよね」(石川さん)

食がこれだけ多様化しているにもかかわらず、ご飯に関してはまだまだ可能性を秘めていることを実感した。今後の展開が楽しみである。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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