ここで、「レトリカル・クエスチョン(答えを求めない問い)」というテクニックをご紹介しましょう。
「皆さんは、今のこの現状に満足していますか?」
「このままで、明るい未来は開けるのでしょうか?」
政治家の演説でも多用されますので、どこかで聞き覚えがあることでしょう。日本語では「修辞疑問」と訳されます。疑問形にすることで伝えたい部分を強調し、聴衆を巻き込む効果があります。
新庄監督は「レトリカル・クエスチョン」の名手
この「レトリカル・クエスチョン」の名手が、「ビッグボス」こと、日本ハムファイターズの新庄剛志監督です。2021年11月の監督就任以来、メディアの注目を集め、就任直後のオフシーズンにプロ野球界で最も報道された人物と言っていいでしょう。
「プロ野球監督」という同じ肩書きの方はほかにも大勢いるのに、なぜ彼だけがこんなに話題になるのか。TBSテレビのある番組に依頼されて、私は話し方の視点からその秘密を分析しました。そこで見えてきたのは、「レトリック」という古代ギリシア時代から続く、人を惹きつけるスピーチ術を多用していることでした。その1つが、「レトリカル・クエスチョン」だったのです。
例えば、監督就任後に札幌ドームで開催された「ファンフェスティバル2021」での言葉を見てみましょう。
「暴れても良いですか?
感動させても良いですか?
泣き笑いさせても良いですか?」
これらの問いかけに対するファンの答えはわかりきっていますよね。ノーと言う人はいないでしょう。これが典型的な〝レトリカル・クエスチョン〞、すなわち「答えを求めない問い」なのです。
ちなみに、この番組には新庄剛志監督ご本人がゲストとして登場。分析させていただいた内容について「心がけている。けっこう前から」と発言されていました。やはりご本人も意識的に表現をマネジメントされていらっしゃるのですね。
強烈なカリスマ性を持ち注目を集めるリーダーの新庄監督が取り入れているばかりか、バラク・オバマ元米国大統領や、スティーブ・ジョブズ元アップルCEO、小泉純一郎元首相、豊田章男トヨタ自動車株式会社代表取締役といった世界中の政財界のリーダーが行っているテクニック。それがレトリカル・クエスチョンなのです。
あなたがこのレトリカル・クエスチョンを使わないという理由がありますか?ぜひ試してみてください。
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