EV(電気自動車)充電器市場の行く末、期待先行で参入続出だが

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3月初め。東京・二子玉川の百貨店、玉川高島屋S・C。高級車が並ぶ駐車場に、1台の車が音もなく滑り込んできた。2010年末に日産自動車が発売したばかりの電気自動車(EV)「リーフ」だ。EV専用駐車場に停車し、プラグを差し込んで充電を開始した。

「お客様の平均滞在時間は約2時間。充電時間としては十分」と、玉川高島屋管理担
当課の小池貴課長は語る。玉川高島屋にあるEV用充電器は2台。利用は週に数回と頻度は少ないが、サービスの一環という位置づけで、無料開放している。

現在、国内で発売されているEVは、日産以外に三菱自動車の「i−MiEV(アイミーブ)」などおよそ1万台程度だ。政府は昨年公表した「次世代自動車戦略」で、2020年に新車販売の15~20%をEVやプラグインハイブリッド車(PHV)が占めるという目標を掲げている。かなりのハイペースで普及させる野心的な政府目標にビジネスチャンスを見いだすのは、自動車メーカーばかりではない。両輪である充電器メーカーの鼻息はさらに荒い。

EV用充電器の国内参入メーカーはざっと20社以上を数え、すでに乱立状態にある。中でも過熱ぎみなのが急速充電器だ。現在普及しているのは玉川高島屋などに置かれている普通充電器だが、フル充電に数時間かかるため、利用シーンは限られている。一方、急速充電器は約30分で80%充電できるなど利便性が高い。走行距離が短い電気自動車にとって、外出先で欠かせない公共インフラとの見方が一般的だ。

高い導入コストが圧迫 課金モデルも見えず

頭一つ抜け出ているのが日産だ。内製化で急速充電器に昨年参入するや否や、希望小売価格147万円と競合他社の半額程度に抑えた機種を投入した。急速充電器はCHAdeMO(チャデモ)という業界規格で統一されており、基本性能は横一線。日産関係者は、「当社が安いのではなく、競合製品が高い」と突き放す。

競合他社も手をこまぬいているわけではない。今年1月に新規参入した安川電機は、給電ケーブルをロボットアームで代用することで、車から降りないままでも急速充電できる機器を開発中だ。東京電力を筆頭株主とする高岳製作所も新たに小型タイプを開発し、コンビニエンスストアなどへの導入をもくろんでいる。

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