投資家は、ハクトが優勝する可能性があるかどうかではなく、実は袴田が本気で宇宙開発に取り組む気があるのかを問うた。
これは、ハクトではなく、袴田に投資するという意味だ。袴田は「心の奥底で、失敗しても価値のある失敗だし、どこかに転職できるだろう。またお願いします、と言えばもとの会社に戻れるかも、という考えもありました」と告白する。もし投資家の話にうなずけば、失敗しました、いい経験になりました、では済まなくなる。
宇宙に人生を懸ける覚悟はあるのか?
子どもの頃からずっと宇宙を追い続けてきた袴田は、突きつけられたこの問いに、意を決して首を縦に振った。
それから何度かの打ち合わせを経て、口座には当面の活動を支えるのに十分な資金が振り込まれた。
逆風が一気に追い風に
初めて潤沢な活動資金を得たハクト。同時期に中間賞のファイナリストへのノミネートも決まり、事態は一気に好転した。タイミングを合わせたかのようにテレビ、ラジオ、雑誌、ウェブメディアから活動を取り上げられるようになり、企業側からの「何か一緒にしたい」というコンタクトも増えた。
なかには想定外のオファーもあった。それがアニメ「エヴァンゲリオン」とのコラボレーション「エヴァンゲリオン20周年 ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト」だ。エヴァンゲリオンの映画版の作中で登場した「エヴァ零号機によって投げられたロンギヌスの槍が、地球を大きく飛び出し月面に刺さる」というシーンを実際に再現するという内容で、ネット上で大きな話題を呼んでいる。
「エヴァンゲリオンの関係者から、2015年はエヴァンゲリオンの20周年なので何か大きなことをやりたい、誰もが考えないことをやりたいという相談があったんです。月面に槍を刺すのは技術的に可能ですか?と聞かれたので、可能だと思いますと答えました」
企画・実行は株式会社グラウンドワークスを含む企業、有志で構成された実行委員会が担当し、ハクトは技術協力という形で、月面で槍を放出する役割を担う。一連のオペレーションは、GLXPでハクトが月に向かった時に、同時に行う予定になっている。
このプロジェクトは、費用の1億円をクラウドファンディングでまかなうというファン参加型の手法も話題を呼び、3月1日の時点で日本のクラウドファンディング史上最高となる3500万円超の資金を集めている(費用はGLXPのミッションとは別建て)。期限の4月5日までに1億円に到達するかはわからないが、このプロジェクトへの参画は、「より多くの人に宇宙を身近に感じてもらうことが我々のミッション」と語る袴田にとって大きな意味のあるものだった。
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