「論理的だけど科学的ではない人」は意外と多い 因果関係と相関関係の違いがわかりますか?

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(写真:tadamichi/PIXTA)
「他社がこうやったらうまくいった。だから、当社でもやろう」という意思決定は、あらゆるところで行われているだろう。しかし、本当にそれでうまくいくだろうか? 実際、うまくいかないケースが多いだろう。その根本的な原因は何なのか? そして、意思決定の質を高めるには、何を考えるべきなのか? 日米のビジネススクールで教鞭をとり、『科学的思考トレーニング 』を上梓した牧兼充氏に、解説してもらった。

他社の成功事例をまねてもうまくいかない理由

皆さんの会社では、よくこんな会話が交わされていないでしょうか。

「競合A社がこの販促キャンペーンを行ったところ、売り上げが2倍になった。だから当社でも同じキャンペーンをやろう」

「業界大手のB社がこのITシステムを導入したら、現場の業務コストが3割削減された。だから当社も同じシステムを導入しよう」

こうして過去の成功事例や他社のベスト・プラクティスを持ち出し、「自社でもうまくいくに違いない」と考えて、自社にそのまま導入しようとする。ビジネスパーソンによくある発想です。

しかし、そのほとんどは失敗に終わります。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。その答えは、次の例え話を読んでいただくと、明らかでしょう。

あなたは具合が悪くなり、病院へ行きました。すると医者はいきなり「あなたに解熱剤の投与をします」と言いました。なぜかと聞くと、医者はこう答えました。「あなたの前の患者に解熱剤の投与をしたら、うまくいったから」。

いかがでしょうか。こんな医者は信用できないし、二度と診てもらいたくないと思うのではないでしょうか。ところが多くの実務家は、この医者とまったく同じことをしています。「他社でこのキャンペーンを行ったら売り上げが増えたので、自社も同じキャンペーンをやれば売り上げが増える」というのは、「前の患者が解熱剤の投与をして治ったから、次の患者も解熱剤で治る」というのと同じロジックでしかありません。

多くの場合、うまくいったケースには特殊な文脈や前提条件があります。前提条件が変われば、結果も変わります。それを深く考えないまま他社の成功事例を真似ても、失敗するだけです。実務家によくあるこの失敗は、専門用語で言うと、「外的妥当性」の検証の欠如によるものです。

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