「論理的だけど科学的ではない人」は意外と多い 因果関係と相関関係の違いがわかりますか?

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どうもおかしな話だということは、皆さんもすぐにピンとくるでしょう。これはまさに相関関係と因果関係を取り違えたケースです。

「太った人たちは、ダイエットコーラを飲んでいることが多い」という事象が観察できれば、「太っていること」と「ダイエットコーラを飲むこと」の間に相関関係があると言えます。ただし、この研究者が結論づけたように、「ダイエットコーラを飲むこと」が原因で、「太ること」が結果であるという証拠はありません。常識的に考えれば、「太っているから(=原因)ダイエットコーラを飲む(=結果)」のでしょう。

ビジネススクールの授業でこの事例を紹介すると、学生たちは「そんな間違いをする人はいない」と笑います。しかし、ビジネスの場で語られる通説のほとんどは、これと同じレベルです。ダイエットコーラと太ることの関係性がわかりやすいだけで、少し複雑になると、誰も間違いに気づかないまま、誤った通説があたかも事実のように扱われてしまいます。

「論理的」だからと言って「科学的」だとは限らない

ビジネスの意思決定においては、次のようなステートメントがよく述べられます。

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「このプラットフォーム上に広告を出すと、他のプラットフォーム上に出すのと比べて、クリック数が2倍になります」。皆さんも会議や商談の場で、こうした文言を日々見聞きしているはずです。

「このプラットフォーム上に広告を出せばクリック数が2倍になる。なぜなら、過去に広告を出した企業はクリック数が2倍になったからだ」というのは、ロジックとしては成り立つので、論理的思考に基づいた正しい考え方だと思うかもしれません。

しかし、そこにバイアスはかかっていないのか、単なる相関関係ではなく本当に因果関係があると言えるのか、といった検証がなされない限り、これらはすべて「ダイエットコーラは人を太らせる」と同じくらい怪しい話でしかありません。

前提が間違っていても、論理的思考によってロジックを立てることはできます。しかし、そもそも前提が正しくなければ、ロジックによって導き出される結論は誤ったものになります。ですから、ビジネスにおける意思決定はロジカルであるだけでは不十分です。「論理的だが、科学的ではない思考」に依存した意思決定は質の低いものにならざるをえません。

牧 兼充 早稲田大学ビジネススクール准教授

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まき かねたか / Kanetaka Maki

1978年東京都生まれ。2000年慶應義塾大学環境情報学部卒業。02年同大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。15年カリフォルニア大学サンディエゴ校にて博士(経営学)を取得。慶應義塾大学助教・助手、カリフォルニア大学サンディエゴ校講師、スタンフォード大学リサーチアソシエイト、政策研究大学院大学助教授などを経て、17年より現職。カリフォルニア大学サンディエゴ校ビジネススクール客員准教授を兼務するほか、日米の大学で理工・医学分野の人材育成、大学を中心としたエコシステムの創生に携わる。専門は、技術経営、アントレプレナーシップ、イノベーション、科学技術政策など。

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