ワイン価格2倍に上げた醸造所が見た驚きの結果 イノベーションを促す企業がしていること
オンラインではなく、実店舗で対面サービスを提供するビジネスで実験を行うのは、コストがかかって大変だろうと思うかもしれません。しかし、ラブマンはこう述べています。
「正直なところ、私が唯一驚いているのは、思っていたより簡単という点だ。学問の世界にいた頃は、取り組むべき充実したデータセットを見つけることが非常に難しかった。今はビジネスにおける事実上すべてのことを測定しているが、それが本当に容易に行なえるので、衝撃を受けているくらいだ。やらない人が多いことをいささか不思議に思っているよ」(アンドリュー・リー『RCT大全』より)
その言葉通り、彼は多数の実験を行っています。
日本企業でも、料金を割引したり、無料のクーポン券を配ったりといった施策を試すことがよくあります。しかし、ハラーズとの大きな違いは、比較対照するコントロール群を作っていないことです。
よって、客数が増えたとしても、それが本当に割引やクーポン券の効果なのかがわかりません。「たまたま夏休みに入った時期だったから客数が増えただけだった」といった可能性もあるでしょう。
大企業以外でもフィールド実験はできる
フィールド実験は大企業だけのものではありませんし、たくさんの店舗を持っていないとできないものでもありません。『その問題、経済学で解決できます。』に、著者の1人である行動経済学者のウリ・グニーズィーと共同研究者のアイェレット・グニーズィーが、2009年にカリフォルニア州のワイン醸造所の経営者に招かれて行ったフィールド実験の例が掲載されているので、紹介しましょう。
その経営者は、「ほかの醸造所の同じようなワインの値段を見たり、直感に頼ったり、去年の値段をもとにしたり、といったやり方」でワインの値段を決めていましたが、より大きな利益を得るために、ウリとアイェレットに値付けをしてもらうことにしたのです。
この醸造所を訪れる人たちは、複数のワインを試飲した上で、購入するワインを決めます。「お客は試飲できるワイン9種の名前と値段を紙1枚に書いたリストを渡される。値段は8ドルから60ドルまでさまざま」です。
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