年金が減っても老後幸せに暮らせる日本の新潮流 ストレスなく十分な収入を得て暮らすのは可能

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――2019年に「老後2000万円問題」が話題になったこともありました。ストレスなく働けたとしても、お金は足りるのでしょうか。

坂本:総務省の家計調査によると、2人以上世帯の一月当たりの平均支出額のピークは50代前半の月57.9万円となります。この時期は、家族の食費に教育費、住宅費、税・社会保険料などにお金がかかります。

しかし、50代後半から60代前半にかけて、子どもの教育費が不要になったり、住宅ローンを払い終えたりして、定年を境に大きく支出額が減ります。以降も支出は減少を続け、70代前半時点で29.9万円まで出費は少なくなります。

その結果、家計の収支の差額は70代前半で月マイナス5.0万円程度で、以降もマイナス幅は縮小していきます(下図)。つまり定年後は月10万円程度稼げば十分やっていけるのです。

『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』P28より

――FIRE(経済的自立による早期退職)への憧れなど、一部では働き続けることを忌避する傾向があります。

ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う (講談社現代新書)
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坂本:現役時に将来の仕事をイメージすると、どうしてもその延長線上で考えてしまいます。しかし先ほど述べたように、定年後の仕事は収入こそ下がりますがストレスは減ります。

また見落とされがちですが、非正規労働者の労働環境は改善傾向にあります。少子高齢化を背景とした人手不足により時給が上昇し、若い人しか受け入れられなかった職種でも高齢者が受け入れられるようになっていくでしょう。

年金は支給開始が後ろ倒しになったり、受給額は減っていく可能性があります。一方で、高齢者が働きやすい状況となり、しかも現役時のような大きなストレスはなく、生活していく分には十分な収入を得られます。

日本社会は自然にそういった方向に進んでいくと考えられます。さらに政策面でも最低賃金の引き上げ、ブラック企業の退出などをうながし、積極的に環境を整えていく必要もあるでしょう。

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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