定年後の必要生活費がガクンと減る安心な理由 現役時の収入確保は困難だが出費も同時に減少

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定年後の出費の変化には気づきにくい盲点がある(写真:Rina/PIXTA)
はたして老後のお金は足りるのか。現役時と定年後では生活の変化が大きく、定年前に老後の家計のやりくりを正確に見積もることは難しい。そこでデータを通して、定年後はどれだけ生活費が必要なのか、現役時との違いを中心に見ていきたい。(※本稿は『ほんとうの定年後 「小さな仕事が日本社会を救う」』より一部抜粋・再編集してお届けしています)

定年後は仕事をしたとしても、現役時代のような高い収入を稼ぎだすのは難しい。一方で、家計の支出額は、その人のライフサイクルの段階に応じて変わる。現実問題として、定年後には一体どのくらいの出費があるのか。社会人として自立してから死亡するまでの家計支出の全体像を追う。

教育費から解放され、生活費がぐっと下がる

図表1‒3は、総務省「家計調査」から、二人以上世帯の一月当たりの平均支出額を年齢階級別に取ったものである。64歳までは勤労世帯の家計収支を、65歳以降は無職世帯の家計収支を取ることで、65歳で引退すると仮定した生涯の家計支出の全体像を分析していく。

家計支出額は34歳以下の月39.6万円から年齢を重ねるごとに増大し、ピークは50代前半の月57.9万円となる。人生の前半から中盤にかけての時期は、家族の食費に教育費、住宅費、税・社会保険料ととにかくお金がかかる。

その後は、50代後半まで家計支出は高い水準を維持しつつ、60代前半以降で減少していく。最も減少幅が大きいのは50代後半から60代前半にかけて。定年を境に、月57.0万円から43.6万円と支出額が減る。60代前半以降も家計支出は減少を続け、60代後半時点で月32.1万円、70代前半時点で29.9万円まで出費は少なくなる。それ以降も緩やかに家計支出は減少、70代後半以降は月26万円程度で安定して推移するようになる。

支出額の減少に最も大きく寄与しているのは、教育に関する費用である。家計調査では授業料や入学金、塾などの補助教育費などの「教育費」に、定期代、かばんや文房具、遊学中の仕送り金などの間接的な経費を合わせたものが「教育関係費」としてまとめられている。

教育関係費は、50代前半で月5.1万円だったものが、50代後半で月3.3万円、60代前半で月0.8万円まで減少し、それ以降はほぼゼロになる。これは定年前後以降の家計支出額減少分の大きな部分を占める。長年家計の悩みの種であった教育に関する費用から解放され、生活費がぐっと下がるのである。

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