企業価値は1300億円!米地域密着型SNS ネットは「狭い世界」へ向かっている?
Nextdoorによると、今まではネットで宣伝するようなことがなかった業種、たとえば犬の散歩代行、ベビーシッターといった地域密着のサービスに新たな市場を開くことになるかもしれない。
それならばほかのネットワークとは違うことになる。たとえばFacebookは利用者のプロフィールに合わせて、ツイッターは利用者の関心事に合わせて、適当な広告を掲載してきた。いずれも利用者自身のフィード上に、つまり投稿写真や近況情報と並んで広告が現れるという方式だ。
「Nextdoorの利用者は猫の写真をアップしたいわけじゃない。何らかのサービスを求めたり、何かを売りたいと思っている」と、出資したベンチマークのビル・ガーリーは指摘する。「広告宣伝については周辺事情が物を言う」。
だが地元中心の広告という試みはこれまでにもたくさんあった。 たとえばAOLが実験した地域情報サイト「パッチ」だ。狭い地域に絞られたローカルニュースのサイトをまとめて提供してみたが、あれは失敗だったと思われている。AOLは2億ドル以上を費やしたあげく、2014年にパッチ事業を売却した。
おすすめ場所情報サイトのフォースクエアも、デジタル通の客を呼び込みたい商店などから広告収入を得る。同社幹部は先月、売上高が前年比3ケタ増を記録したと述べている。Facebookも最近になってから中小企業向けに地域限定の広告掲載を可能にした。口コミサイトYelp(イェルプ)やGoogleは、利用者が行う検索や評価に基づいた情報を提供している。
差別化できる要素
知らない人より知っている人からのおすすめ情報のほうが重みがある、というのがNextdoorの基本理念だ。つまり、見ず知らずの人がYelpで言っていることや、アルゴリズムに依存したGoogleの広告より、ご近所の人の言葉のほうが響くというわけだ。
オンデマンド方式は、昔ながらの広告宣伝の手法で地元商店から料金をもらうという方法とも著しく異なる。「交流サイトというのは、上からではなく、下からの現象だ」とNextdoorの役員も務めるVC会社グレイロック・パートナーズのデービッド・ズィーは言う。「社会的効用がある。利用者自身、それぞれが商業や地域サービスに関して発言する」。
調査会社フォレスター・リサーチの報告書によると、向こう5年間はGoogleのような検索連動型広告が主流であり続けるだろう。その間にネット広告費は1030億ドルを突破するという予想だ。同社アナリストのシャー・バンボスカークは、その中で交流サイト部門がいちばん伸びるものとみている。
Nextdoorのビジネスプランはまだ開始段階にある。過去3年間、ほとんど利用者数の拡大に集中してきた。その具体的な数は公表していない。
今年は企業による投稿を受け入れる予定だ。これまでは利用者と公的機関だけで交流するという条件で来た。ただし収益化に向かって急ぐつもりはない。かつてFacebookが広告を導入したときのように、利用者の不興を買いたくはないのだ。
「こんなにたくさん失敗例がある。長期戦だから、一歩ずつ進んでいく」とNextdoorのトリアは言う。「忍耐と信頼と長い助走路が必要だ」。
(執筆:Mike Isaac 記者、翻訳:石川眞弓)
(c) 2015 New York Times News Service
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