また、最近のFRB高官の発言をみると、政策金利であるFF金利の「到達地点」については、もはやタカ派、ハト派の意見の相違はあまり大きくなく、利上げを止めるかどうかについても、経済とインフレ「データ次第」という見解でかなり集約されているようにみえる。そして、13日に発表された9月CPI(消費者物価指数、前年同月比8.2%)を踏まえると、従来のFRBの想定を超え、FF金利が5%に接近するまで上昇する可能性が高まっている。
FRBの引き締めによる経済減速の兆候が明確に表れるのは、労働市場を中心とした国内経済指標である。多くの経済指標によって減速が示されるまでは、アメリカ株市場に対しては慎重に臨むべき局面だろう。景気減速が広がり、FRBの引き締め姿勢が変わり、それが市場で好感されるには、2023年半ばまで待つ必要があるかもしれない。
日本株の相対的な優位は2023年春ごろまで続く
ところで、アメリカ株市場は年初から大きく下落し年初来安値圏で停滞するいっぽうで、日本株は比較的底堅い。2022年は、アメリカ対比での日本株の優位が続き、日米相対株価(TOPIX/S&P500)上昇が続いている。「対アメリカ株」での相対的な日本株の底堅さは、10月に入りさらに強まっている格好である。
2022年に入ってから、日米相対株価とドル円相場を比較すると両者はかなり連動している。これは、円安進展とともに相対的な日本株の優位性が強まっていることを意味する。メディア等では、大幅な円安は弊害が大きく、円安が進んでも以前ほど日本株が上昇しなくなった、などと言われている。実際には、日銀による金融緩和の徹底がもたらす円安が日本企業の利益と日本株を支えている構図は、変わっていないということだろう。
これは、岸田政権の政策について、当初警戒された「分配強化」や「早期増税」などの政策がやや軌道修正されていることが、多少は好感されているかもしれない。しかし、より大きいのは、安倍・菅政権のレガシー(遺産)である日本銀行の金融緩和のおかげで日本株の大幅下落が回避されている、ということだろう。この構図は、アメリカの利上げ政策の転換が予想される2023年春先までは続きそうである。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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