「みんクレ」1億円賠償にみる投資被害回復の困難 裁判で全面勝訴した投資家に10%も戻らない

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尋問では「潔く判決には従いたい」と述べていた元社長。だが、判決が確定した後で示した賠償金の支払いについての提案は、男性ら投資家たちに選択の余地が実質的にないものであった。

元社長が「恨み」という言葉を用いたように、破産には社会的な信用を低下させる懲罰的な意味合いがある。ただ、破産させても男性らの取り戻せる額が増えるわけではない。破産の申し立てには費用もかかる。

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「なぜこちらが折れなければいけないのか。理解はできるが納得できない」。投資家たちの協議では反発する声も出た。とはいえ、元社長がアメリカに行く意思を示したこともあって、先は見通せない状況に。結局は賠償金9割カットの和解を受け入れることになった。

ところが、この1000万円もいまだ全額が払われていない。男性らは自分たちの代理人弁護士による粘り強い交渉で、支払ってくれるのを待つしかない状態だ。

訴訟を起こした後に投資家たちは、裁判所を通じてみんクレの親会社の銀行預金などを仮差し押さえする手続きを行った。男性の場合、仮差し押さえをした資産から投資で損した分の約6割を取り戻せる計算だった。

だが、ふたを開けると、親会社が滞納していた税金の支払いに預金などの資産が充てられた。仮差し押さえによって取り戻せたお金は数万円とまさに雀の涙。弁護士に払う経費などを含めると損失額はむしろ拡大した。

この裁判には救いがなかった

「自分たちの主張が認められ、『自己責任』の一言で片付けられなかったことはよかった。ただ、トータルでみると、この裁判には救いがなかった」。別の男性投資家はそう本音を漏らす。

たしかに判決は投資家にも過失があるとしたみんクレの主張を退けた。親会社などではない第三者の企業に融資するかのように説明していたことについては、「投資家を欺くためにあえて虚偽の表示をしたものと認められる」と断じた。しかし、現状はみんクレの「論に負けても実に勝て」だ。

みんクレ以外のソーシャルレンディング事業者でもずさんな融資の実態が明らかとなり、投資家との間で今も訴訟が続いている。問題が続発した原因として、金融庁や財務局、都道府県など当局による管理体制の不備を指摘する声もある。行政による事前規制が甘く、司法による事後救済も当てにならない。それでは「貯蓄から投資へ」への道はおぼつかない。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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