買い物をすると気分が高揚し、達成感や幸福感が得られます。それによって一時的に気分が晴れたような気もするのですが、このような買い物は、買った「物」ではなく、買う「行為(プロセス)」に囚われているため、次から次へと買い物を続けてしまいます。
すると、買い物を我慢できなかった無力感や後悔(罪悪感)が大きくなり、また支払いへの不安も大きくなります。実際に、カードローンが増えていくと、収入を得なければならないという負担感も大きくなり、自責感、無力感、不安感、疲労感が刺激されてしまいます。買い物へのしがみつきで、うつを悪化させてしまう人は少なくありません。
買い物の頻度が高い場合は、買い物をするときは現金払いにしたり、通販番組や通販カタログを遠ざけたりするよう心がけてみましょう。
しがみつきへの対処法は?
しがみつきは、本人にとっては生きるための必死の努力ですから、まずはその行為に頼るしかない本人のつらさを理解し、苦しさに耐えてきたその努力を認めてあげましょう。
そのなかで、しがみつきのマイナス面については共有しますが、無理矢理やめさせようとしてはいけません。まずは、うつ状態への対処(疲労への対処)を優先します。うつ状態が回復してくると、自然としがみつきをしなくなることも多いからです。
それでも、しがみつきのマイナスが大きい場合は、本人とよく話し合い、苦しさを緩めるための他の方法を一緒に探していきましょう。このとき、うつの支援に慣れているカウンセラーにアドバイスを求めるのもいいでしょう。
下園 壮太
メンタルレスキュー協会理事長、元・陸上自衛隊衛生学校心理教官
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しもぞの そうた / Sota Shimozono
1959年生まれ。82年防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援で得た経験をもとに独自の理論を展開。陸上自衛隊衛生学校で、衛生科隊員(医師など)に対する教育に携わってきた。2015年に退官。現在は、NPO法人メンタルレスキュー協会理事長を務める傍ら、講演や研修会で、独自のカウンセリング技術を普及。著書は『うつからの脱出』(朝日文庫)、『心を守る ストレスケア』(池田書店)など多数。
前田 理香
公認心理師、うつ・クライシス専門カウンセラー、元海上自衛官
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まえだ りか / Rika Maeda
NPO法人メンタルレスキュー協会カウンセラー。事故や事件、自殺などショックな出来事を体験したクライアントや、うつ病を患っているクライアントと向き合い、カウンセリングを行なっており、多数の組織等の復職支援に携わる。2021年4月から、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との契約に基づき、有人宇宙システム株式会社(JAMSS)がとりまとめる国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する日本人宇宙飛行士の健康管理運用業務(精神心理支援)に参加。