「買い物依存」「SNS」「お酒」うつが悪化するNG行為 しがみついてしまうことで良くない状態になる
対処法の多くは、本人がこれまで行なってきたストレス解消法であったり、気分転換の方法であったりします。元気なときにはうまくいっていたことなのですが、今のうつ状態の本人を観察している周囲には、「それをやるから、うつが悪化する、それにしがみついている」と見えるため、私たちは「しがみつき」と呼んでいます。
たとえば、次のようなものがあります。
「しがみつき」は、溺れかけている人が必死に掴んでいるイバラの蔓(つる)のようなものです。イバラの棘(とげ)で手が血まみれでも、放すと溺れてしまうのですから、そう簡単に手放せません。
一方、周囲は、大切な人が「イバラの蔓」を掴んでいるのを見て「早くやめさせなければ」と思ってしまいます。ところが、周囲が無理やり引き剝がそうとすればするほど、本人はより必死に掴んでしまうのです。
さらに、「自分の苦しさをわかってもらえないんだ」という無力感(誰も守ってくれない)を感じてしまいます。イバラの蔓は、安全に掴める浮き輪を先に渡してあげて、本人が「これでもう溺れないですむ」と安心できて初めて手放すことができるのです。
いくつかの例を見ていきましょう。
お酒へのしがみつき
うつ状態では、常に不安や自責の念、無力感がつきまといます。元気なときにお酒で憂さを晴らしていた人は、うつ状態になっても同じ方法で、嫌な気持ちを一瞬でも忘れようとしてしまいます。
また、不眠の苦しさから、眠るために飲酒をしようとする人もいます。ところが、じつはアルコールは、脱水をもたらすうえに、数時間後には覚醒させる作用もあり、一番重要な睡眠の質と量を阻害してしまいます。
また、おいしいから飲むのではなく、酔うために飲むので二日酔いにもなりがちです。これが、うつ特有の波(気分の日中変動、明け方に気分が悪くなることが多い)と相まって、遅刻したり、お酒の匂いをさせながらの出勤となると社会的な信用も失墜します。すると、余計にストレスが溜まり、また飲酒をしてしまうという悪循環に陥るのです。
もちろん、受診をして薬を処方されている場合、服薬中に飲酒をすると薬が効きづらかったり、逆に効きすぎたりすることがあるため注意が必要です。そもそも、副作用を強める可能性があるため、お酒と薬は併用しないことが基本です。