新iPhoneに「衝突事故検出」搭載された納得のワケ 車を何度も何度も衝突させて実験を繰り返した

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「この機能は、より深刻な自動車事故のために開発されたものです。そのため、軽い接触事故を起こしたとしても、作動することはないでしょう。そうした場合、自分で、もしくは同乗者が電話をかけて通報する必要があります。

ただ、重大な事故に遭った場合、自分が大きなケガを負っていなくても、ショックが大きいものです。そのような場合、緊急通報を促すことが必要になります」(ファング氏)

また、例えば最新のiPhone 14とApple Watch SEの双方を持っていて事故に遭った場合は、独立してそれぞれが衝突を検出するという。しかしiPhoneの場合、衝突の衝撃で車内や車外のどこかに飛んでしまう可能性もあり、Apple Watchのほうが、手首で通報ができるという。

「すでにこの機能が役立ったというフィードバックが、顧客から届き始めています。我々としては、できれば人々がこの機能を必要としないことを望んでいますが、顧客が車を運転するとき、少しでも安心感を与えることができれば、と思っています」(ドランス氏)

アップルらしいアプローチとスマホの価値

今回のインタビューを通じて、改めて、アップルがハードウェアとソフトウェアの双方を統合して開発している強みが伝わってくる。同時に、アップル以外による実装は現実的ではないことも、残念ながら明らかになってきた。

アップル以外のスマートフォンメーカーがこうしたモーションセンサーを搭載することはできるかもしれない。さらに、このモーションセンサーのデータをアプリから使用できるようにすることも可能だ。

しかし、ドランス氏が「この機能を必要としないことを望む」とコメントするとおり、万が一のときに動作する機能であり、そのためにユーザーがあえてアプリを入れて備えたり、そのためにお金を出すか?と言われると疑問符が大きく浮かぶ。

アップルワールドワイドプロダクトマーケティング担当バイスプレジデント、カイアン・ドランス氏
アップルワールドワイドプロダクトマーケティング担当バイスプレジデント、カイアン・ドランス氏。生活必需品としてのデバイスに安全機能が必要だと訴える(2022年9月7日のイベントよりキャプチャ)

アップルが言うように、膨大な台数の衝突データを集め、アルゴリズムを組み立てる必要があり、そのコストを賄うだけのお金を出す顧客を集めることが難しいからだ。

同時に、今回上位モデルのiPhone 14 ProシリーズやApple Watch Series 8/Ultraだけでなく、より価格を抑えたiPhone 14シリーズやApple Watch SEにも、車両の衝突検出の機能をハードウェアとして組み込んだ点も意欲的だ。

高いiPhoneを買ったから事故のときに緊急通報がなされる、という機能差をつけず、2022年モデルの安全機能として共通化することで、アップルのスマートフォンやスマートウォッチに「安心」という価値を追加している。

ファング氏は「今後も守護神のような機能を構築し続け、できる限り顧客の役に立ちたい」としており、日常生活をより安全に送ることができる価値を、アップル製品に追加し続けていくことになるだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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