日本人が当たり前に行う「多数決」その重大な欠点 子どもの対話力と決める力を奪っている
宿題・定期テスト廃止や固定担任制の廃止など、先鋭的な学校改革で注目を集めた工藤勇一氏(現・横浜創英中高校長)。そんな工藤校長が考える、不確実な未来を生きる子どもたちに、本当に身につけてほしいこととは? 教育哲学者・苫野一徳氏との新刊『子どもたちに民主主義を教えよう──対立から合意を導く力を育む』から抜粋してご紹介します。
トラブルは絶好の学び場
ある日の放課後、横浜創英の校長室に中学1年生の男子生徒4人がなだれこんできました。明らかにトラブルを抱えた様子です。
「おお、どうした?」
私がたずねると、そのうちの3人が残りの1人、A君のことを一方的に批判しはじめました。
「そうじゃない、こいつらが悪いんです」
A君もA君で一歩も引きません。よくよく話を聞くと両方に悪い点はありそうですが、原因をつくったのはどうやらA君。課金ゲームのためにお金を借りて返さないそうです。
さて、みなさんが私の立場なら、この事態にどう対処するでしょうか。
A君だけ校長室に残して説教しますか?
さらに詳しく事情を聞き、事実関係を整理していきますか?
すぐさま担任を呼び出して、対処を委ねますか?
私はいずれのこともしませんでした。
私は興奮気味の彼らにむかって、まずこう言いました。
「え、これって僕に仲裁してほしいのかい? それとも不満を聞いてほしいだけなのかい? いったい僕に何を求めているの? 僕が間に入ることはできないわけじゃないけど、この問題を解決するのは君たちだよ。わかってる?」
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