世界の「経済政策バブル」が弾けようとしている 「八方美人」という方針をとり続ける日本の末路

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ぜいたく品の最たるものである「戦争」という行為を消費する最後のチャンスとばかりに暴発した国もあるが、「愛国心のある兵士」という必需品が不足して、劣勢となっている。

その他の国々では、さまざまな経済政策が取りざたされているが、いずれも行き詰っている。典型的なのが英国だ。

「ブレグジット」(英国のEU離脱)の結果、移民により供給されてきた単純労働力が欧州で最も不足することとなり、世界で最も深刻なインフレに直面した英国は、苦しまぎれに、国民へのエネルギー支出支援のばらまき、富裕層への減税という、支離滅裂な政策を宣言した。しかし、その結果、自国通貨、自国債券、株式とすべてが急落して苦境に陥り、慌ててこの経済政策を撤回した。

一方、日本の無秩序な経済政策は、この20数年間、英国をはるかに超えた、世界有数の非効率でかつ無駄極まりない、いやそれどころか、経済社会を破綻させる負の影響の大きな政策ばかり行われてきた。

経済成長戦略は成功したことはないし、景気対策と称したばらまきで、このままだと財政破綻へまっしぐらである。しまいには、国家のもっと重要な通貨価値をインフレと円安で毀損させる政策を、政府と中央銀行がタッグを組んで全力で実現させてきたのである。

なぜ日本は愚策を採り続けてきたのか

今回の議論の焦点は「これらの政策がいかにひどいか」ということではない。「なぜこのように明らかに愚かな経済政策を、日本は採り続けてきたのか」ということである。

それは、日本においては、経済政策は「ぜいたく品」であり、「麻薬品」であったからである。そして、「必需品」たる必要な社会政策をおざなりにしてきたのである。

これが、日本が21世紀に世界の主要国から転落してきた理由である。日本の経済政策には、まったく対立軸がない。「小さな政府か大きな政府か」(効率的で妥当な規模の政府)、「自由か平等か」「規模か質か」などがあってしかるべきだが、結局何もないのである。

アメリカは2つのはっきりした軸があった(大統領にもなったドナルド・トランプ氏の出現で、それが失われつつあることが明示的になった。それで現在の混乱が生まれている)。また英国は、新政権がエネルギー支出補助金ばらまき、富裕層減税と何でもやると表明したことが危機を招いた。

だが、少なくとも中央銀行は、インフレ退治として、急激に厳しい引き締めを行う意思がある。一方の日本はどうか。何もない。

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