博多大吉「生理の辛さは痛みだけでないと知った」 高尾美穂医師と一緒に「生理」について考える

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高尾:そうそう、一方でPMSは女性ホルモンといわれるエストロゲンとプロゲステロンの変動が原因です。といってもこの2種のホルモンが約28日の周期で分泌量を増減させること自体は、妊娠に向けての準備が正常に進んでいる証。エストロゲンの分泌量がピークに達したあとに卵子が放たれます。排卵ですね。排卵されたということは、妊娠できるチャンスです。そこでプロゲステロンの分泌量が増えて、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整えます。

排卵から1週間~10日ぐらい経って「今月は妊娠しなかった」と気づくと、エストロゲンもプロゲステロンも減っていきます。もう子宮内膜を維持しなくてもいいからですね。そして生理がはじまるころには、ほぼ分泌されていない状態になります。生理が終わると、またエストロゲンが分泌されるようになり、排卵に向けて準備していく――というのが一連の流れ。

これでなぜメンタルに影響が出るかというと、エストロゲンには抗うつ作用があって、プロゲステロンには抗不安作用があるからです。生理がはじまる前にホルモンの分泌が徐々に減るということは、抗うつ作用も抗不安作用もなくなっていくということ。だから、気持ちが不安定になったり、どうしようもなく不安に駆られたりする。これが、PMSでメンタルに影響が出る理由です。

さらにそれと連動して、神経伝達物質であるセロトニンも減ります。セロトニン=幸せホルモンって聞いたことありませんか? こうしたものがそろって分泌されなくなるので、生理前の女性はひと言でいうと、「幸せを感じにくい」精神状態なんですよ。

排卵後と排卵前に女性の身体に起こっていること

大吉:それが毎月くり返されるということですもんね。

高尾:もちろん人によりますけど、大変でしょ? この時期のメンタルの不調には、自律神経も関係しています。女性の身体でがんばらなければいけない時期というのは、〝排卵後〟なんです。なぜなら、妊娠しているかもしれない時期だからです。そこでがんばるときの神経=交感神経が優位になります。仕事に集中しているときやスポーツなどは交感神経が優位ですが、これには緊張感がともなうんですね。

逆に、排卵前は副交感神経が優位です。この自律神経にはエストロゲンが影響しているので、エストロゲンがたくさん出ている時期はハッピーだしリラックスできる。そしてまた生理前になってエストロゲンが減ると、イライラしたり怒りっぽくなったりします。メンタルの変化とは、このようにいくつものことが同時に起きた結果だと考えられています。

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