日本人がコロナに延々翻弄され続ける残念な理由 今回の感染症法改正はまるで芯を食っていない

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厚労省は、今回の感染症法改正で「保健所の体制・機能の強化」を打ち出しているが、こんなことをしても問題は解決しない。コロナを「2類」に留めおく限り、スタッフの感染による営業的、風評的損害を恐れる医療・看護・介護機関の経営者は、コロナ患者への対応を避けるはずだ。これこそ、前出の坂本看護師が経験したことだ。

では、なぜ、「5類」に変更しないのか。それは、「2類」のスキームを残せば、厚労省が差配し、保健所・医療機関・検査会社・宿泊療養施設など、多くの関係者が補助金などの利益にありつくことができるからであろう。報告対象を高齢者や重症化リスクが高い患者に絞り込めば、保健所や医療機関業務が逼迫することもない。

当初、厚労省は世論に押される形で、コロナを「5類」に変更するつもりだった。全国紙5紙は8月中に「コロナ」と「5類」という単語を含む記事を50回も掲載している。多くは厚労官僚がリークしたものだろう。

コロナ対応は「5類」でないとうまくいかないのに

ところが、9月に入り、このような記事はめっきり見かけなくなった。9月の1カ月間に、全国紙5紙が「コロナ」と「5類」という単語を含む記事を掲載したのは、わずかに9回だった。この間、第7波がピークアウトし、世論の関心は統一教会問題や安倍元総理の国葬へと移った。厚労省や関係者の「本音」が出たのだろうと筆者は推測する。

コロナ対応は「5類」でなければうまくいかない。ところが、来年の通常国会は冬の大流行の最中、その後は春の流行・統一地方選へと続く。秋の流行収束時期に開催される今回の臨時国会で、感染症法を改正し、「5類」に格下げしなければ、日本のコロナ迷走は当面終わらない。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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