日本人がコロナに延々翻弄され続ける残念な理由 今回の感染症法改正はまるで芯を食っていない

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病院の経営者に問題があった可能性も否定はできないが、第7波では、このような病院に入院することが必要となる重症患者が、そもそも少なかったのだろう。都立のコロナ基幹病院に勤務する内科医は、今夏の状況について、「入院しているコロナはほとんど中等症止まりで軽症も多かった」という。これは、オミクロン株が重症化しにくいからだ。

では、どんな人が問題となるのか。それは高齢者、特に要介護のケースだ。訪問看護サービス会社ビジナを経営する坂本諒看護師は、「感染すると従来の介護サービスが利用できなくなり、訪問看護サービスを利用しようにも、急いで医師に指示書を作成してもらうのは難しい」という。こうやって、コロナ難民が生まれる。

このような患者は、最終的には保健所の調整により入院となるのだが、「入院中に安静を強いられ、十分なリハビリを受けることができないため、一気に廃用性萎縮が進むことが珍しくない」(坂本看護師)。

インフルエンザと同じ対応でいい

このような患者に対しては、その状況に合わせて、地域の医療・看護・介護スタッフが臨機応変に対応するしかない。まさに、インフルエンザに対してやっていることだ。

第7波では、厚労省は保健所や医療機関の逼迫を緩和するため、保健所への届け出対象を高齢者や持病を有する患者に限定した。しかしながら、オミクロン株を「2類」のままに据え置いたため、高齢の感染者は、従来通り、医療機関から保健所に届け出となり、多くの場合、保健所から急性期病院に入院を斡旋されることとなった。

本来、高齢者がオミクロン株に感染した場合、自宅や介護施設で適切に治療し、医療行為が必要になったら、地元の病院に紹介すべきだ。長年にわたり、地域で構築されてきた医療・看護・介護の「お互いの顔が見えるネットワーク」が機能する。

ところが、「2類」に留めおく限り、このようなことは期待できない。それは、地元の医療従事者と、保健所の関係が希薄だからだ。例えば、臨床医がかかりつけの患者に関する情報を保健所に報告しても、彼らから情報が共有されることはない。私は地域の医療・看護・介護関係者は、ある程度知っているが、保健所の職員とは会ったことがない。この状況で、保健所が仕切れば、むしろ現場は混乱する。

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