スノーピーク「社長辞任」の直前に迎えていた転機 梨沙氏就任後初の下方修正、再値上げ見送りも

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期初に掲げた利益水準を大きく下方修正した要因として、予定していた再値上げを見送る方針に転換した影響もある。

スノーピークは2022年1月、資材価格の高騰や、キャンプ用品の需要増で生産ラインが逼迫したことを受け、300品目以上の値上げに踏み切った。資材価格高騰が続く中で利益水準を担保するため、今期中に2度目の値上げも検討していたが、8月には見送る方針へと変更した。

キャンプブームで生産ラインや在庫が逼迫した2021年から一転し、今年は前述の需要の落ち込みもあり、アウトドア業界ではメーカーや小売店各社が在庫を潤沢に持った状態が続く。在庫消化のため一部メーカーはキャンプ用品でたたき売りを行うなど、価格競争は激化している。

「他社が販売価格を下げている中、スノーピークだけ値上げを実施すれば売り上げの勢いを落としかねないと判断した」と、同社の財務担当者は説明する。

「顧客基盤はいっさい揺らいでいない」

2022年初に発表した中期経営計画でスノーピークは、2024年12月期に売上高495億円、営業利益100億円(営業利益率20%)の目標を掲げる。アウトドアブームが一巡し、原材料価格高騰の行方も見通しづらい今、高収益体質を維持する難易度は一段と増している。

社長に再登板した太会長は、8月下旬に開かれた決算説明会で「われわれの顧客基盤はいっさい揺らいでいない。新規会員数、エントリー商品の販売数も増加していて、今後の中長期的成長に陰りはないと判断している」と強気姿勢を崩さなかった。

ただ、長年愛用している顧客からは「最近はワークマンやお洒落な北欧ブランドなどが参入し、機能性やデザイン性の面ではスノーピークとあまり遜色のないブランドが増えている」との声も上がる。

下方修正、そして後継指名した梨沙氏の辞任と、想定外の事態が相次ぐスノーピーク。独自のファンビジネスを武器に、コロナ禍でつかんだ新規客のロイヤルカスタマー化をどこまで進められるかが、難局打開のカギを握ることになる。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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