ストレスは、正式には外部からの刺激や負荷(ストレッサー)によって、心身に生じる反応のことをいいます。1936年、カナダの生理学者ハンス・セリエ博士が「ストレス学説」を提唱したのが、医学における活用の始まりとされています。
ストレッサーには暑さ・寒さ、人体への有害物質など「物理的・化学的」なもの、栄養不足・睡眠不足・病気など「生理的」なもの、日常生活における緊張・不安・恐怖・悲しみ・怒りなど「心理的・社会的」なものがありますが、現代人のストレッサーのほとんどは「心理的・社会的」なものとみられています。
茶道はストレスを緩和する
人は心身に緊張や苦痛を感じたとき、筋肉が緊張し、呼吸数や心拍数、血圧などが上昇します。これは生体を防御するための反応で、一瞬にして起こります。
反応のプロセスをたどると、まず脳の前頭葉がストレッサーを脅威として知覚し、視床下部から自律神経系と内分泌系を通じて、全身の臓器や器官に対して危機に対応するよう指示が出される仕組みです。
ただし、こういった状態が一時的であればよいのですが、長い間、過度なストレスを受け続けるとこれらの反応も続くことになり、生体に問題が生じます。不定愁訴にはじまり、頭痛、高血圧、狭心症、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、気管支喘息、皮膚炎など、さまざまなストレス性疾患を発症することにつながってしまうのです。
茶道の稽古をおこなうと、イライラや不安など不快な感情が軽快することがあります。心によどんでいた感情がすっきりと消化され、気分が軽くなったような感覚だといわれます。
ネガティブな感情を消化するにはさまざまな方法がありますが、不安や哀しみ、怒りなどを抱えていたとき、「ひと晩、眠ったら楽になった」「どうでもよくなった」という経験はどなたにもあると思います。一般的なレベルのネガティブな感情は、心に充分な休息を与え、本来の機能を回復させることで自然と消化されていきます。
茶道の稽古は「今この瞬間」に集中します。そのため思い悩んでいることから一時的に避難することができます。そして自然のアイテムに囲まれた安らぎの空間でリラクゼーションの時を過ごし、心が深い休息をとることができます。そのためネガティブな感情の消化がうながされるのです。
リラックスのレベルが深くなると、「いつもと違う身体感覚」を体験することがあります。茶道の稽古に十分、慣れた方の場合、お点前(てまえ)を見ているときや教えられた所作を自分がおこなっているとき、ふっと無心になる瞬間が訪れます。さらに熟練していくと、身体が所作をすっかり覚え、ほとんど何も考えず、ただ静かに身体を動かすようになります。
これは茶道に限りませんが、このように無心に何かの作業をおこなっている際、人は少し特殊な集中状態になり、五感が研ぎ澄まされます。
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