「茶道は古臭い」と思う人に伝えたい驚くべき効能 ストレスフルなビジネスパーソンに人気急上昇

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たとえばお点前に没入していると、指先の感覚が敏感になっていることに気づきます。思考が極限まで低減することで、自然と意識が感覚に集中され、鋭敏に感じられるようになるのだと思われます。

そんなときは、抹茶をすくう茶杓(ちゃしゃく)の木の感触や微かな香りを、普段より深く感じ取ることができます。また抹茶を入れる容器、棗(なつめ)のなめらかな手触りと漆塗り独特の香りも、深く味わうことができます。それまでは意識が向かなかった五感の感覚を、豊かに明瞭に楽しめるのです。

さらに、繊細な感覚を知ると、認識も繊細になります。そのため、このような感覚をたびたび経験することで、普段の物事の感じ方、とらえ方が次第に変化し、感性を磨くことにもつながっていきます。

抹茶の成分も、気分や思考活動のバランス調整に、大きく貢献しています。抹茶には、ビタミン、ミネラル、食物繊維のほか、カテキン、テアニン、カフェイン、サポニンなど健康によい成分が豊富に含まれています。

身体への作用としては、カテキンの効果がよく知られています。抗ウイルス作用や、免疫細胞であるマクロファージの活性化作用をはじめ、悪玉コレステロールを減らして動脈硬化を予防する効果、アミロイドベータの毒性を低減してアルツハイマー型認知症を予防する効果などが注目されています。

抹茶は腸内フローラのバランスを整える

ほかにメカニズムはわかっていませんが、抹茶が腸内の悪玉菌の一部を減らし、善玉菌を増やして腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを整える作用も示されています。

心への作用としては、何といってもリラックス効果が大きいでしょう。さらに農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究では、カフェインとテアニンの絶妙なバランスによって、心理的ストレスの影響が軽減され、ストレス耐性も高めている可能性が示されています。

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抹茶には、覚醒作用があるカフェインが含まれているのですが、別の成分、テアニンがその働きを抑制するため、興奮状態になることはありません。リラックスしながら、頭が明晰に冴えた状態に整えられます。

その一方、コーヒーはテアニンを含んでいないため、カフェインが中枢神経を刺激して交感神経の働きを高め、興奮状態に導きます。眠気をすっきり覚まして一時的に集中力を高めるにはよいのですが、抹茶とは作用が異なっているのです。

このテアニンは、それ自体にもリラックス効果と抗ストレス作用があります。テアニンを摂ると30~40分後にはアルファ波が発生し、摂取量を増やせば不安傾向が高い人にも効果があることが確認されています。

またマウスを使った農研機構の研究では、抹茶を継続して飲んでいると、急性ストレスによって起こる意欲の低下を抑える可能性があるとしています。

石川 雅俊 まめクリニックグループ創業者

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いしかわ まさとし / Masatoshi Ishikawa

1979年、静岡県湖西市に生まれる。2005年に筑波大学医学専門学群を卒業後、臨床研修を経て、KPMGヘルスケアジャパン株式会社に参画し、2012年にマネジャーに就任。
2014年より国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授、厚生労働省医政局総務課長補佐、ハーバード大学武見フェローを経て現職。東京医療保健大学特任教授、筑波大学医学医療系客員准教授、複数のスタートアップ顧問、神奈川県顧問等を兼務。2022年、文京区に茶室・和室レンタルスペース「雅-Miyabi-」をオープン。著書に『200万円からはじめるクリニック開業』『男のヘルスマネジメント大全』(ともにクロスメディア・パブリッシング)がある。

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