なぜ戦国時代のエリートらは茶道に熱狂したのか 政治に利用、武士としての評価にもつながった

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茶戦国時代のトップエリートたちも茶道に熱狂していました(写真:川崎市民団体Coaクラブ/PIXTA)
茶道の新たな価値が注目され始めています。「近年、茶道を始めるビジネスパーソンが増えている」「ビジネスパーソンにとって有益な資質が養われる」と、メディアで話題を呼んでいるのです。
実際、茶道はビジネスパーソンの「癒やしとリフレッシュ」「仕事に使える教養の習得」「高い価値観を磨く人間修養」に大いに役立つとされ、また、「デザイン思考」「アート思考」などの右脳的思考も養われます。きめ細やかな配慮の心が育つことで、コミュニケーション力がアップするとともに、繊細な美を見出す感性が磨かれます。
不確かで複雑で曖昧でストレスフルなビジネス環境下で発揮する茶道の“効能”を、医師である著者が医学的に解説。書籍『大切なことはすべて茶道が教えてくれる』から、3回にわたってお伝えします(今回は3回目)。
1回目:「茶道は古い」と思う人に伝えたい、驚くべき効能
2回目:ビジネスに必要なセンスは「茶道」で身に付ける訳

天下人を魅了した武家茶道

戦国時代のトップエリート、天下人たちを魅了した武家茶道について、少し詳しくお伝えしておきましょう。「武家茶道」の登場は、茶道の様式において、根本精神をくつがえすような大転換でもありました。

利休の侘び茶は、小さな茶室で質素な道具を用いておこなわれていました。しかし武家茶道は、将軍はじめ武士たちへのもてなしを想定していることもあり、広間の茶室に意匠を凝らし、かつてとは異なる、比較的豪華な道具が用いられるようになりました。

また利休は茶室に身分の上下を持ち込みませんでしたが、古田織部は豊臣秀吉の意を汲んで、武家社会の厳格な主従関係を壊さないよう、身分の違いに応じて接遇を区別する作法を取り入れました。これは「分相応の茶」といわれます。

さらに、これまで茶室に刀を持ち込むことは固く禁止されていましたが、帯刀が許されるようになりました。しかし左腰に刀を差していると、左腰につけるべき袱紗(ふくさ)をつけることができません。そのため武家茶道では、袱紗を右の腰につけるようになりました。武家茶道には、ほかにも千家とくらべて細かな所作に違いがあります。

私が門下である「石州流伊佐派(せきしゅうりゅういさは)」も、武家茶道の流派です。

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