また、中国軍機が中間線を越えたのは、これまではごくまれであったが、8月は302機で中間線越えが常態化した。中間線は「本丸」の台湾本島を守る「外堀」として機能してきたが、中国軍機がそれを越えて飛行するようになり「外堀が埋められる」形になった。中国がペロシ訪台を口実として、軍事的に台湾本島に一歩近づき包囲する陣形を作ったといえる。これは台湾にとってマイナスである。ただし、「本丸」は中国軍も簡単には侵攻できないという実態は変わっていない。
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台湾の民意の反応
関連する台湾の世論調査を見たい。中国の軍事演習への恐怖感については、「怖かった」17.2%、「怖くなかった」78.3%で、圧倒的多数が「怖くなかった」と回答した(台湾民意基金会)。台湾の民衆が中国の軍事演習中も普通の生活を送っていたことは台湾の報道やSNSを通じて知ることができたが、それを裏付けるデータである。
台湾がパニックになっていたら、中国の思うつぼであっただろう。これは台湾人の「偉大なる鈍感力」と呼べる特性で、威嚇によって屈服させようという中国の狙いを熟知した反応といえる。
ペロシ訪台については、「歓迎した」52.9%、「歓迎しない」24.0%で、多数派は歓迎した(台湾民意基金会)。一方、「ペロシ訪台は台湾にとって利益と弊害のどちらが大きかったか」という質問に対しては、「利益が多い」35%、「弊害が多い」44%、「利害半々」12%で、「弊害が利益より多かった」という見方が多数である(聯合報)。台湾の民意はペロシ訪台を歓迎しつつも、中国の圧力が高まったことをリアルに見ている。
アメリカの軍事介入への信頼感はどうなったであろうか。「仮に中共が台湾を攻撃したらアメリカが台湾防衛に出兵すると信じるか」という問いへの回答は、「信じる」44.1%、「信じない」47.5%で、「信じない」が上回った(台湾民意基金会)。聯合報の調査でもまったく同じ傾向が出ている。
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