理研、大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防 切迫の労使交渉、中座し戻らぬ人事部長

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2つ目が、2017年2月頃に有期雇用の研究者らに書かせた「従事業務確認書」だ。この確認書では、毎年1年ごとの有期雇用の更新上限が2023年3月31日であることを記し、2023年4月1日に有期雇用の期間が10年を超える研究者らにサインさせた。翌年度以降の有期雇用の契約書にも毎回、2023年3月31日までしか更新しない旨を記している。

複数の研究者らによると、この従事業務確認書は人事部から直接説明を受けて書いたものではない。研究室の上司にあたるPI(研究主催者)から「契約更新に必要な書類だから書いておいて」と言われたパターンが大半という。ある研究者は更新上限の内容に不安を感じてPIに意味を質問すると、「ただの形式的なものだから」と言われたという。

研究者らは「PIは毎年の契約更新の判断権を持っている。逆らって関係を悪化させたくない。PIも、私たちにサインさせなければ理研から睨まれ、研究の予算を減らされる懸念があるのだろう」と語る。そのうえで、「理研から従事業務確認書を根拠に、『2023年3月末の更新上限に同意した』と言われるのは、だまし討ちされた気分だ」と訴える。

背景はともかく、外形的に見れば、理研側は2023年3月31日で有期雇用が通算10年になる研究者らの契約更新を打ち切るうえで、上記の2つの理由を保持していることになる。

ルール撤廃は雇い止め翌日から

理研が無期転換申込権の発生直前に雇い止めを行う仕組み

そのような中、新たに大きな動きがあった。理研は7月末、組合側に、就業規則の「有期雇用上限10年ルール」を2023年4月1日に撤廃する方針を伝えたのだ。この日以降に雇用されている有期雇用の研究者は、10年の上限を超えて理研での勤務が可能になる。

理研は上限撤廃の理由について、「通算契約期間の上限があることで、来年度以降の新たな有期プロジェクトへの応募資格がなかった方々に対し、その規制を撤廃し応募の機会を提供するため」などとしている。

ただ問題は、その前日の3月31日で雇い止めになる多くの研究者がいることだ。4月1日から有期雇用上限10年ルールを撤廃しても、そうした研究者の契約打ち切りには効力が及ばない。そのため、組合側は「就業規則の廃止は、3月31日までにするべきだ」と迫り、9月の労使交渉でも説明を求めている。

理研は、労使交渉で合意しなくても4月1日からの撤廃で押し切る方針だ。

撤廃は3月31日か、4月1日か。1日を巡る攻防は、果たしてどのような意味を持つのか。

3月31日で雇い止めとなる研究者が4月1日以降に再び理研に採用されることは理論上可能だ。しかし、組合側は「雇い止め対象の研究者が4月1日以降の契約のポストに申し込んでも、理研がもし採用すれば有期雇用の通算が10年を超えて無期転換申込権を得るため、選考で不利な扱いを受けるのではないか」と疑義を呈する。

理研が4月1日以降の雇用契約で、3月31日に雇い止めした研究者からはわずかな人数だけ採用してアリバイづくりにするのではないか―。研究者らは、そんな強い懸念も抱いている。

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