ライバルが手を結ぶ「自販機」の厳しい運営の実情 ダイドーとアサヒが新会社設立し事業効率化へ
コロナ禍を経て、一段と厳しさを増した自販機事業。「自販機に対する各社の取り組み姿勢が二極化」(ダイドー)する中、積極的な投資を続けてきたのがコカ・コーラとサントリー、ダイドーだ。
売り上げの約8割を自販機事業が占めるダイドーは、自販機への投資を加速させている。2022年初に発表した中期経営計画では、成長投資として2027年1月期までに約550億円を投じ、そのうち7割強を自販機のデータ収集などに充当する方針を掲げる。さらに、人流の変化などにより場所によっては新たな需要が生まれると見て、設置台数自体も増やしている。
同社の自販機に対する投資で、核となるのが「スマートオペレーション」だ。自販機は通常、各地域を担当するドライバーが1台ずつ回って商品を補充する作業を繰り返す。天候や人の流れで売れ筋商品は大きく変わるため、補充が必要な数量などを見定めるには、担当者の「勘」に頼る部分も多かった。この非効率さが、ドライバーの重労働や長時間労働につながっていた。
そこでダイドーは、自販機を無線化することで売り上げを遠隔地から把握するシステムを導入。補充が必要な商品を事前に確認し、トラックにセットできるようにした。これにより、ドライバーの労働負荷の低減や、より少ない人員で業務を回すことが可能となる。同社は今後5年間で、担当者1人当たりの売り上げを2割増やすことを目標に掲げている。
アサヒにも一石二鳥の提携
ダイドーの中島社長は会見で「オペレーションの進化に投資は不可避。適切に投資を行える会社のみが生き残る市場と考えている」と強調した。新会社では、アサヒ飲料の自販機にもこのオペレーションシステムを共有し、スケールメリットによって自販機運営のさらなる効率化を狙う。
またダイドーは、同業他社と比べて自販機1台あたりの売り上げが少ない。今回の提携により、2023年3月以降、アサヒの「ウィルキンソンタンサン レモン」や「モンスターエナジー」などをダイドーの自販機で販売することで、売り上げ増加を期待している。
自販機事業の構造改革に取り組んできたアサヒ飲料にとっても、ダイドーのシステムを導入できるメリットは大きい。コストの効率化という点では、2023年以降にアサヒの工場で、ダイドーの一部製品を製造することも検討している。アサヒはコロナ禍で飲料の販売数量が落ち込んで以降、大幅な回復に至っておらず、工場の稼働率は低下していたとみられる。ダイドーの製品を扱うことで稼働率を高められれば、一石二鳥と言える。
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