ライバルが手を結ぶ「自販機」の厳しい運営の実情 ダイドーとアサヒが新会社設立し事業効率化へ

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しかし、これらの取り組みで両社の自販機事業の抜本的な収益改善が図れるかは不透明だ。

現時点の計画では、新会社にぶら下がる形となった後も、ダイドー、アサヒの子会社はあくまでそれぞれのトラックで補充作業などに回る。同じエリアの隣り合う場所に両社の自販機があっても各々が向かうこととなり、作業効率を上げるためにはさらなる事業の一体化の余地もありそうだ。

提携会見に出席したダイドードリンコとアサヒ飲料の社長
自販機事業での提携を発表したダイドードリンコとアサヒ飲料の社長(写真:ダイドードリンコ、アサヒ飲料)

また、今回の提携では、ダイドーとアサヒが抱える自販機の直販会社がすべて、新会社の傘下に収まることとなる。これについて、ある大手飲料メーカーの幹部は「かつてキリンビバレッジなどが実施したような、自販機関連業務の外部化の布石となる可能性もある」と話す。

キリンビバレッジは2000年代、自販機業務に携わる従業員を自販機事業関連会社に出向させたのちに転籍させ、事業の効率化を図った。固定費がかさむ事業の場合、本体より低い給与体系のグループ会社に社員を集約すれば、事業全体のコストカットにつなげられるケースが多い。「最初は本体の自販機部門の人員を新会社に出向させ、軌道に乗ったころに新会社への転籍などを迫る可能性もあるのでは」(前出の幹部)。

自販機での生き残りを懸けて手を結んだダイドーとアサヒ。縮小の続く自販機市場で勝ち残るためには、より踏み込んだ効率化策を迫られる可能性もありそうだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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