確かに、BA.4/BA.5対応ワクチンを打ったほうが、オミクロン株BA.4/BA.5に対する抗体価は上昇する。7月11日のモデルナ社の発表によれば、BA.4/BA.5対応ワクチンによる抗体価の上昇は、BA.1/BA.2対応ワクチンの1.8倍だった。
ただ、この差が、複数回のワクチン接種を終えた人に対して、臨床的に意義があるか不明だ。この点について、イギリス『ネイチャー』誌が、9月1日に公開した「新しいオミクロン株対応のワクチンは、従来型ワクチンによる追加接種と同程度の防御を提供する」という記事が興味深い。
この記事は、オミクロン株対応ワクチンの最新情報をまとめたものだが、いくつかの研究成果が紹介されている。その臨床的効果については、ニューサウスウェールズ大学のクロマー教授らの研究が引用されている。
この研究では、1,000人にBA.4/BA.5対応ワクチンを追加接種すると、従来型ワクチンと比べて8人の入院を減らすことができると推計されている。この数字の解釈は難しい。『ネイチャー』編集部は、公衆衛生学的には「わずかな利点でも、その普及を正当化するには十分かもしれない」が、個人レベルでは「多少はまし」な程度と評している。
BA.4/BA.5対応ワクチンの供給量は当初限られる?
わずかな差といえども、オミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチンのほうが有効であることは事実だ。ただ、極論すれば、追加接種に用いるワクチンは、従来型(武漢型)でも、最新のオミクロン株BA.4/BA.5対応でも大差ないという訳だ。高齢者やがん患者などハイリスクと考えられている人の中には、オミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチンに期待したい人もいるだろうが、あまり固執しないほうがいい。
それは、ファイザー社およびモデルナ社のオミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチンは、9月1日にアメリカで承認されたばかりで、両社はアメリカへの供給を優先し、十分な量のワクチンが日本に入ってこない可能性が高いからだ。
その代わり、アメリカ国内で在庫となるオミクロン株BA.1/BA.2対応のワクチンは全世界に輸出される。岸田文雄首相が、オミクロン株対応ワクチンは「10月末までに対象者全員分が輸入される見込み」と説明しているのは、このような背景があるためだ。現状では、オミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチンを待っても、自分の分まで回ってくるかはわからない。
以上がオミクロン株ワクチンの現状だ。皆さんが接種を考える際の参考になれば幸いである。
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