ワクチンを打てば、感染することはあっても、重症化しにくくなる。このあたりの状況は、インフルエンザワクチンと同じだ。インフルワクチンの効果の持続は数カ月だ。麻疹や天然痘に対するワクチンのように接種すれば、一生、免疫が持続する訳ではない。だからこそ、毎年、流行前に接種する。オミクロン株対応ワクチンの効果の持続期間については、まだ研究結果が発表されていないが、そう長続きはしないと考えておいたほうがいい。
幸い、コロナの流行には季節性がある。一昨年は11月から流行が本格化し、ピークは1月11日、昨年は年末から感染が増え、ピークは2月9日だった(図1)。
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今冬も同じ頃に流行るだろう。感染に注意する時期は12~2月だ。それなら、11月以降に追加接種をすれば、重症化だけでなく、感染も予防できそうだ。
すでに、このような試みを行っている国もある。その1つがイスラエルだ。8月2日、イスラエルの研究チームは、1月のオミクロン株の流行時期に、医療従事者に従来型ワクチンを用いた4回目接種を行うことで、感染のリスクを65%低下させたとアメリカ『JAMA Network Open』に報告している。
自分にとってメリットのある時期に追加接種を
この時、イスラエルは2021年末から流行が本格化し、感染者数のピークは1月25日だった。まさに流行の真っただ中に医療従事者に一気にワクチンを接種したことになる。人口約920万人のイスラエルだから実行可能だった施策だが、医学的には合理的だ。日本政府は実行可能性の観点から、早期に追加接種を開始するのだろうが、患者さん個人としては、自分にとって、最もメリットがある時期に追加接種をしてほしい。
では、どのワクチンを打つべきだろうか。8月31日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ファイザー社とモデルナ社が開発したオミクロン株BA.4/BA.5対応ワクチンの追加接種に対して、緊急使用許可(EUA)を与えたと発表した。
両社は、日本でも承認を申請する予定だ。厚労省が承認すれば、わが国でも、今冬の流行の主体と考えられているオミクロン株BA.4/BA.5に対応するワクチンが利用可能になる。では、このワクチンが国内に入荷されるまで、追加接種を待つべきだろうか。私は、その必要はないと考えている。
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