仕事ができない人は「疑う」の本質をわかってない 自分だけで誰にも頼らず思考を論理展開できるか

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帰納的思考展開の事例:
事象1 ソクラテスは死んだ
事象2 プラトンも死んだ
事象3 アリストテレスも死んだ
事象4 ソクラテス、プラトン、アリストテレスは人間である
結論  ゆえにすべての人間はいつか死ぬ

この事例では、ソクラテス、プラトン、アリストテレスが死んだ、というサンプルから、共通要素(人間)を取り出して、「すべての人間はいつか死ぬ」という推論を導き出しています。

帰納法では、偏りのないサンプルをできるだけたくさん集められるかどうかもポイントになります。なぜなら、帰納法では「他の事象の見落とし」は論理破綻になり得るからです。さきほどの例でも、もしも不死の人間がこの世に存在したら、結論は大きく変わってしまいます。そのため、多角的に情報を集めて論理展開を行うよう心がけましょう。

1+1=3なら「なぜ?」とその時点で疑問が出ます。一方で150歳まで生きている方がいることを知ったら「なぜ?」と疑問を持つはずです。また、「疑う癖を身につけろ」と一方的に言われてもそれは根性論に過ぎません。「どうしたら矛盾に気付けるのか?」と思考を変換して、その上で「矛盾を浮き彫りにする思考法」を得てしまえば自ずと“疑い力”を実装できるようになれます。

疑問を持っても、誰かに訊いてはいけない

「創造性を高めたい」「深い洞察力を養いたい」と考えるならば、思考フェーズは独立している必要があります。決定を下したり問題に対処したりする際に、上司や先輩、同僚などの他人に相談することは間違いではありません。

でも、疑問を持ったからと言って、安易に「誰かに訊く」行為は、多くの場合、拙著で伝えている「独立思考(独り立ちして考えられる人になること)」にとっては有害となります。

他人に自分のためにアイデアを考えてもらうことは、自分自身からオリジナルのアイデアを生み出す機会を自らで奪ってしまうからです。その結果、自らの創造力を伸ばす機会を自ら逸してしまい、「他人に聞く」が定着すると長期的にも悪い習慣となります。もし、今自分が上司や先輩・同僚などの他人に訊かないと動けないタイプなら、今すぐ「尋ねる」ことに慎重になったほうがいいでしょう。

古くからの大手企業でありがちなのですが、新人が「どうしたらいいのですか?」と上司や先輩に安直に質問している光景です。この光景が当たり前では、その会社では言われたことしかできなくなる人材が量産されることに繋がります。

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