ENEOS会長「性加害騒動」に見た不祥事隠しの痛撃 「隠せる時代」は去り、「守りの広報」の重さ増す
ENEOSホールディングスは9月21日、会長グループ最高経営責任者(CEO)を8月に退任した杉森務氏について、女性に対する「不適切な言動」があったと発表した。杉森氏を巡っては、『デイリー新潮』が沖縄県那覇市の高級クラブでの「凄絶な性加害や被害者の骨折」を報じていた。ENEOSは8月12日時点では杉森氏の辞任理由を「一身上の都合」としか発表しておらず、SNSでは不審の声が上がっていた。
記者・デスク、上場企業の広報部長を20年以上経験し、『BtoB広報 最強の攻略術』の著者である日高広太郎氏は「コーポレートガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)を重視する流れやインターネットの普及などを背景に、企業が大きな不祥事を隠し続けられる時代ではなくなっている」と指摘。事実を隠蔽すると「不祥事への批判に加えて、隠蔽自体への非難、無用の臆測という三重苦に陥り、企業イメージを大きく損なうリスクが高くなる」と指摘する。
辞任理由の非公表、報道で性加害の詳細明らかに
「杉森務氏から代表取締役および取締役を辞任する旨の申し出があり、これを受理しましたのでお知らせします」
8月12日、ENEOSホールディングスが突然発表したリリースに、石油業界やメディア関係者らは驚かされました。杉森氏は日本経団連の副会長や石油連盟の会長、ENEOSの会長など要職を歴任してきた財界の大物。その剛腕で業界の再編を主導してきただけに、石油元売り業界では知らない人はいないとも言われる人物だからです。
多くの人たちが驚き、疑問を持ったもう1つの原因は、辞任理由について「一身上の都合」としか書かれていなかったことです。「一身上の都合」は、辞任の理由は公表できません、というようなものです。理由を隠したかったENEOS側の思惑とは裏腹に「こんな大物が突然辞め、理由を言えないなんて不自然だ。一体何があったのか」と不審の声が上がり、真実を探る動きが強まりました。
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