ENEOS会長「性加害騒動」に見た不祥事隠しの痛撃 「隠せる時代」は去り、「守りの広報」の重さ増す
経済環境や制度面からも、企業不祥事やその隠蔽には厳しい目が向けられています。2010年以降、企業不祥事が相次ぎ、コーポレートガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)重視の流れが強まったからです。内部告発者はより保護されるようになり、世界中の企業がESG(環境・社会・企業統治)経営に取り組んでいます。このような環境の中で、不祥事の隠蔽が発覚すれば、経営に悪影響が出るのは明らかです。
隠蔽は批判倍増、無用の臆測の「三重苦リスク」
それでは、不祥事隠蔽のリスクは具体的にはどんなものがあるのでしょうか。まずは不祥事への直接の批判です。次に「不祥事隠し」がバレた場合、批判の矛先は企業の対応の悪さにも向かいます。
実は多くの人たちは「どんな企業でも不祥事が起こることはありうる」と潜在的に理解しています。企業は多くの人が働いていますから完璧に全員を管理するのは不可能ですし、自分が働いている会社で問題が起きているケースも珍しくないためです。しかし、不祥事を隠蔽したとなると話は別です。「不祥事を隠して批判を避けようとした卑怯さ」や「反省の姿勢が見えない」ことが、多くの人たちの心証を悪化させるからです。
不祥事隠しのデメリットはそれだけではありません。今回のENEOSのケースでは、発表当初、SNSなどで「五輪汚職がらみだろう」「何らかの不正ではないか」「補助金を横領したのではないか」「脅されているらしい」といった根拠のない臆測が飛び交いました。ENEOSが杉森氏の「不適切な言動」を認めた後も、「まだ他に隠していることがあるのではないか」と疑われてしまいます。
つまり、企業不祥事の隠蔽は「不祥事への批判」「隠蔽そのものへの批判」「根拠のないネガティブな臆測の拡散と信用力低下」という三重のリスクを抱え、企業イメージや築いてきたブランドを大きく損なうことになるのです。
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