ENEOS会長「性加害騒動」に見た不祥事隠しの痛撃 「隠せる時代」は去り、「守りの広報」の重さ増す

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デイリー新潮が9月21日に、杉森氏の性加害や被害者が骨折までしていたことを報じた後、ENEOSは「人権尊重、コンプライアンス徹底を経営の最優先事項と位置付けているにもかかわらず、今回の一部報道にあるとおり、元会長自らがこれに背く行為を行ったことは、極めて遺憾です」とのコメントをようやく発表。被害者や関係者に謝罪しました。当初、辞任理由を明らかにしなかったことには「被害を受けられた方のプライバシー保護を最優先とし、元会長の辞任の背景についての言及を控えておりました」としました。

ジャーナリズムは民主化、不祥事隠しが困難に

私は記者だけでなく、企業広報も経験しているだけに、今回のENEOSの広報担当者がいかに大変だったか、あるいは今も大変かについて多少なりとも理解できるつもりです。内部情報まではわからないだけに、今回、どのような対応が最善だったかを安易に結論づけるのは難しいように思います。

ただ、1つ言えるのは、現在は「従来に比べて大きな企業不祥事を隠し通すのがより難しい時代になっている」ということです。背景にはインターネットの普及と、それに伴う「ジャーナリズムの民主化」があります。

仮に被害者が情報を漏らさなくても、メディアが報道しなくても、目撃者はいくらでもSNSなどで情報を発信できます。動画を撮影していれば、信憑性はさらに高まります。性加害などの大きな問題行動を第三者に見られれば、簡単に情報を不特定多数に提供できる仕組みがすでにあるわけです。特に注目されやすい有名人や公的な組織の長が不祥事を起こした場合は、反響も大きくなります。

ENEOSの事例のように、要職についている人が理由を公表せずに突然辞職した場合、多くの人たちがSNSなどで「なぜだ」「何か不祥事があったのではないか」と書き込み始めます。SNSで話題になれば、メディアも「読者ニーズ、視聴者ニーズがある」と判断し、より真剣に取材し、発信するようになります。

一方で、ネットの普及はSNSでの誹謗中傷の問題など負の側面も生み出しました。こうした誹謗中傷には厳正に対処する必要があります。

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