会社の不正を内部通報した社員を襲った「想定外」 窓口だった弁護士が裁判で「会社側の代理人」に

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公益通報者保護法に詳しい拝師徳彦弁護士は「微妙なところですが、内部通報の社外窓口を担った弁護士が訴訟段階で会社側代理人に就任することは、弁護士職務基本規程27条に違反する可能性があります。利益相反の問題がある訴訟について弁護士は業務を禁じられています」と指摘。さらにこう話す。

「内部通報した人は秘密を守ってもらえるという前提で弁護士に話をしているはず。調査時に必要なこと以外は会社に漏れないだろうという考えがある。そうした前提で通報者は洗いざらい、詳細に話をする。今回のケースを許せば、その前提がひっくり返ってしまいます。これが通用したら公益通報制度、内部通報制度は成り立たない。訴訟代理人を引き受けた弁護士は職務基本規程違反で懲戒処分となる恐れもあります」

拝師弁護士は、通報窓口を担った弁護士に対して訴訟の代理人を依頼した会社側の問題にも言及した。

「この案件そのものは今年6月の改正公益通報者保護法の施行前でしょうけれど、改正法で会社側には内部通報体制の整備が義務づけられました。現在も(A社が)こうした体制、システムを継続しているとすると改正法違反となる可能性がある。法改正に伴って示された民間向けのガイドラインには、『通報対応に関する業務を外部委託する場合は、中立・公正性に疑義が生じる恐れや、利益相反が生じる恐れのある法律事務所などの起用は避けることが必要』と記されていますから」

拝師徳彦弁護士
「今回のケースを許せば、内部通報した人は秘密を守ってもらえるという前提がひっくり返ってしまう」と話す拝師徳彦弁護士(筆者撮影)

消費者庁「一般論としても回答はできない」

一審判決から半年あまりを経た9月上旬。B氏の控訴棄却の二審判決が東京高裁で言い渡された。B氏側が控訴理由の中で訴えた被告代理人をめぐる問題は、裁判の本筋ではないためか、判決文では一切触れていなかった。

まるで「ワンオペ」のように、同一の弁護士に内部通報の窓口と裁判の代理人を受任させる企業が今後もあらわれた場合、改正法の内部通報体制の整備義務違反に問えるのか――。消費者庁参事官室に取材したところ、こんな答えが返ってきた。

「個別事案には答えられないし、一般論としても回答できない」

制度の趣旨を骨抜きにするような事態は、このまま放置されてしまうのだろうか。

本間 誠也 フリー記者

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ほんま せいや / Seiya Honma

北海道新聞記者を経て、フリー記者。

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