ヤマザキマリと考える「情報の真偽を見極める力」 情報の数々を自ら判断する力を鍛える必要
歴史を振り返ってみると、戦争や、革命など、その時代に生きた人々は多くの困難と直面してきました。一方で戦争がない現代の日本社会において、いま人々の心を蝕んでいるのはSNSなどにあふれるさまざまな情報です。
『テルマエ・ロマエ』など数々の著作で知られる、イタリア在住のヤマザキマリさんは、それらの情報を鵜呑みにすることの危険性、そして情報のバックグラウンドを知ることの大切さを説きます。ヤマザキさんの新著、『歩きながら考える』から一部抜粋・再構成しご紹介します。
火山の噴火など大きな変化が自然に起きたとき、昆虫はそれ以前とは違う生態を見せます。生息環境の状況に生物は敏感に反応するわけです。人間も、南太平洋の島々のように温暖な気候の海に囲まれた地域と、生命を焼き尽くすほどの灼熱の太陽が照りつける中東の砂漠地帯では、そこに暮らす人の性質も生活体系もまったく異なっています。
自然環境の状況がそれほど私たちの生態に影響を及ぼすなら、新型ウイルスの世界的な流行は人間にどんな変化をもたらすのか。本当のところは、おそらく随分と先にならなければ見えてこないと思いますが、今一度、歴史のなかにヒントを探ろうと思います。
無教養を推奨する組織への危惧
まず、いちばん危惧すべきことは、無教養を推奨する組織が力を握るようになることです。中国の毛沢東政権下における文化大革命やカンボジアの原始共産主義組織であるクメール・ルージュもさることながら、近年の例では、バーミヤンなどの遺跡を破壊し、アフガニスタンの政権を掌握したタリバンも挙げられます。
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