「キャンプにも挑戦しています。設営はすべて夫がやっていますけど」
うれしそうに口をはさむ典代さん。火の消し忘れなどはタイマーを使って予防するなどの対策もできるが、ずっと1人で生きていくのは大変すぎると自覚していた。今では親のように甘えられる同い年の夫がいつでもそばにいる。
お互いを認め合い、人生を分かち合う生活
「障害者雇用ですけど、事務職での業務内容はほかの社員と変わりません。職場ではお世辞の1つも言えない愛嬌のない私ですが、家に帰って来るとその日に会社であったことをすべて夫に話して発散したいんです。聞いているのかいないのかわからないときもありますけど(笑)、気持ちがスッキリします。私は毎日が楽しいです、あなたは楽しい?」
と、隣に座っている章夫さんに屈託なく質問する典代さん。章夫さんはハハハと笑うのみだ。ここのところは重要なので、筆者が改めて聞いた。結婚しなくてもいいと思っていた章夫さんがなぜ典代さんとは人生を分かち合おうと思ったのだろうか。
「彼女は素直だし、変わっているところがあるので一緒にいて飽きません。思いついたらすぐに行動したり、今回のように人が興味を持ちにくいことに興味を示したり。付き合うようになって早い段階で障害のことを話してくれたので、変わっている原因を理解することもできました」
今回のように、というのは本連載への登場を指している。筆者としては「人が興味を持ちにくい」内容だとは思いたくないが、典代さんはインタビュー取材先候補として自ら手を挙げてくれた。その行動力は確かに特異かもしれない。
最後に、あまりに幸せそうな典代さんに定型の質問をした。50歳を目前にした初婚だけど、もっと早くに章夫さんと結ばれたかったと思うのだろうか。
「もし30歳ぐらいのときに出会えて結婚できていれば、子どもを産むことを考えていたと思います。夫はとてもいいヤツです。彼が子どもをあやしている姿を見たかった気もします。お父さんになってほしかったな……。でも、私のほうは親になれるかは能力的に疑問です。いずれにせよこの年齢で子どもを作ることはないので、これからは2人の生活を満喫しようと思っています。お金は残さずに2人で使い切るつもりです」
夫は妻について「一緒にいて飽きない」「変わっている原因を理解できてよかった」と評する。妻のほうは夫が「とてもいいヤツ」で「子どもをあやしている姿を見たかった」と明かす。ストレートな表現ではないが、言いたいことは1つなのだと感じた。心から愛している、と。
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