新「八重洲バスターミナル」便利と言い切れない訳 発着は集約されるもたどり着くのが難しい立地

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名鉄バスセンターにも、東名急行バス(名古屋から東京方面)、日急バス(名古屋から京都・大阪方面)、名鉄の高速バス(名古屋から中津川、飯田、びわ湖バレイなど)が乗り入れるようになり、旅へのいざないをかきたてていた。子ども時代、毎週のように見ていた大型バスターミナルが、東京では平成も末期にならないとできなかったことのほうが不思議である。

広島市中心部の「広島バスセンター」や九州一の繁華街、福岡・天神にある「西鉄天神高速バスターミナル」など、高速バス網が発達した地方都市でも、東京よりもかなり早く、規模の大きなバスターミナルが、空港や新幹線の駅と並んで地域の玄関的な役割を果たしていた。

天神高速バスターミナルの出発表示(2016年)
西鉄「天神高速バスターミナル」の出発表示(2016年、筆者撮影)

そんな中で東京は、土地の制約のほか、ターミナルが東京、新宿、池袋、渋谷、品川の各駅周辺に分散していることもあり、ランドマークとなるようなバスターミナルが造られてこなかったと考えられる。

「バスターミナル東京八重洲」のこれから

さて、八重洲のバスターミナルは、東京ミッドタウン八重洲の地下に入っているように、ターミナル単独の整備というより、八重洲地区の大規模な再開発とセットとなっている。そんな背景もあり、ターミナルの整備はUR都市機構(都市再生機構)が担当するが、運営は新宿での経験がある京王電鉄バスが行う。

東京ミッドタウン八重洲の全面開業は2023年3月だが、前述したように1日1500便が発着可能というバスターミナルのフルオープンは6年先の2028年だ。

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現時点では、まだまだこのあたりの認知度は低く、当分の間、初訪の利用者がバスターミナルを見つけるのは難儀しそうである。

また、これまでのバス停は地上だったため、首都高速道路の宝町ランプへの出入りに発着から1分もかからなかったが、地下2階から地上に上がる分、所要時間も少し伸びそうだ。なお、東京ミッドタウン八重洲には、オフィスのほか、外資の高級ホテル「ブルガリホテル東京」、区立小学校、認定こども園などが入居することになっており、全面開業時にはさらに注目を集めそうである。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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