「スニーカーバブル」背景にある1億総転売ヤー化 二次市場で高いか安いかが人気のバロメーター

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スニーカーブームの背景にあるものとは(写真:© 2022 Bloomberg Finance LP)
スニーカーブームの現在、新作が発売されてすぐに完売となり、フリマサイトなどで定価の数倍で取引される商品は珍しくない。この熱狂ぶりは「スニーカーバブル」とも呼ばれるが、その背景にあるものとは――。
スニーカーショップ「チャプター(CHAPTER)」や「atmos(アトモス)」を手掛けてきた本明秀文氏の著書『SHOE LIFE「400億円」のスニーカーショップを作った男』から一部抜粋してお届けする。

スニーカーは「バブル」か?「貨幣」か?

そもそも、なぜスニーカーはカルチャーや文化と呼ばれるのか。僕は文化を、生活の中で生まれ、使われる茶碗やコップといった民藝品が象徴していると考えている。「民藝」とは思想家の柳宗悦が作った言葉で、それまでただの道具にすぎなかった工芸品に生活で使われることの美しさを見出し、そう名付けた。日常に密着し、日常で使われるものであること。民藝品には、作り手の思いや、それを使う個人の思いが日々重なり合って文化ができている。

スニーカーにもそういった側面がある。元々スポーツ用に使われていたものが、生活の場に出て、新たな一面が見出されていく。憧れのスポーツ選手が履いていたスニーカーを街で履くことで自分を少しその選手に重ねてみることだったり、成功したラッパーの象徴として自分もその一員になったかのようにそのスニーカーを手に入れたり……。日常生活の中にストーリーや魂が宿り、積み重なって、初めて文化となる。

そして、スニーカーの値段も鍵だろう。高校生や大学生でもお年玉やバイト代で買えるぐらいの値段。数千万円する車や数百万円する時計が二次市場で倍やそれ以上の値段になっても、誰でも買えなければカルチャーとしては根付かない。

これには投機的なお金の流れも影響している。2008年のリーマンショック以降、金利引き下げによる金融緩和で、世界中でお金の量が増えた。お金の量が増えると、銀行の金利が下がり、人々は投機対象を探し始めた。文化という信用を持ち、市場規模もあるスニーカーはうってつけだったわけだ。金融緩和によって、アメリカをはじめとした株式市場は高騰し、大金持ちは車やパテック フィリップに、ほどほどのお金持ちはロレックスに、そして若者はスニーカーに投機し始めた。

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