「スニーカーバブル」背景にある1億総転売ヤー化 二次市場で高いか安いかが人気のバロメーター
このスニーカーバブルで一番成功したのはやはりナイキだろう。時価総額の上がり方を見れば一目瞭然。2011年ごろは400億ドル(約4兆円)前後だった時価総額は、現在1400億ドル(約18兆円)規模まで伸びている。アディダスの現在の時価総額は320億ユーロ(約4兆円)だから、恐ろしいほどの一人勝ちだ。
僕は魅力的なスニーカーを発信し続ける、その開発力がナイキの強みだと思っているが、その開発力の源泉を垣間見た出来事があった。2018年、ナイキの経営陣が小売店の意見を経営戦略に反映させるべく、「T 32 」を集めてアメリカでサミットを開催した。
ナイキは世界のアカウント(正規卸先の小売店)の中からトップティア(ランキングの階層)を選び、その32のトップアカウントを総じて「T32」と名付けていた。そこにはアトモスの名前もあった。
忖度のない声を求めるナイキ
発売前のサンプルが並べられた会場で、小売店の代表者たちが意見を述べていくのだが、アメリカのアトランタを拠点とするスニーカーショップ「ア マ マニエール」のオーナー、ジェームズ・ホイットニーが、新作の「エア ジョーダン」シリーズを見た瞬間、「こんなの売れねぇよ」と放り投げたのは衝撃だった。
「こんなに素直に、忖度なく本当のことを言えるやつがいるのか」。僕も忖度はできないタイプで、悪口は言わないけど、メーカーの売り出し方が悪いとか、売れそうにないとか、アトモスのYouTubeなんかでもはっきり言っている。たまにメーカーから怒られることもあるけど、結局、メーカーの言うとおりにやっていたら商売は長く続かない。おべっかを使ってもお客さんをだますことはできないし、お客さんを裏切ることになるからだ。
ナイキは、そういった忖度のない声を本当に欲していたし、マーケットを本気で取り込もうとしていた。耳の痛い情報でもプラスになるならしっかりと聞く。僕らを尊重して自由に意見させてくれるこの姿勢が、商品力を支える要因の一つなのだと実感した。
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