(1)注文があっても限られた数しか販売しない
多くのスポーツカーメーカーが作るSUVは量販を大きな目的としているが、プロサングエは最初からそれを否定している。フェラーリ全体の年間販売台数に対して、「プロサングエが20%を超えることはない」と明言している。
たとえばランボルギーニのSUV「ウルス」はすべてのモデルを含む年間総販売台数の6割を占めており、今までランボルギーニに関心のなかった顧客のエントリーカーともなっている。しかし、フェラーリはプロサングエをエントリーカーではなく、あくまで「既存オーナーに対する選択肢の拡大だ」と主張する。
実は、各国のフェラーリディーラーは、既存のロイヤリティーが高いフェラーリオーナーから、まだ価格もスタイルもわからない段階でプロサングエの注文を受けている。そして、その数は「想像を絶する数」であるという。これからプロサングエの注文をしようとショールームを訪れても、その納車は何年も先になることは間違いない。
「みんながほしがるのに売らない」というのは、収益を考えたなら非常識極まりないが、これはエンツォ・フェラーリ言うところの「需要より1台少なく作れ」という教えに基づいている。SUVにおいてもフェラーリは、希少性の追求が第一なのだ。
室内の広さは二の次
(2)巨大な V12気筒エンジンを搭載。スペース効率は無視
エンツォ・フェラーリの「フェラーリはV型12気筒であるべし」というかつてのブランディングポリシーがそこにあることは間違いないが、なによりスペース効率を考えるなら巨大な多気筒エンジンをSUVに採用することは、とんでもなく非常識だ。
さらにそのエンジンは前輪よりもボディ中心部に向けて、つまりキャビン(客室)にくい込む形に配置されているから、乗員のスペースはかなり狭くなる。さらにトランスアクスルレイアウトを採用し、トランスミッションを後部車軸に置くから、荷室も当然ながら狭くなる。
全長が5mを切るプロサングエの客室は決して広いとはいえず、荷室も「フェラーリとしてはもっとも広い」とうたわれるものの、一般のSUVと比較するならきわめて狭い。あくまでも“フェラーリとしては”なのである。
そこまでして追求するのは、前後の重量配分を最適化したフェラーリならではのハンドリングへのこだわりだ。
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