(3)観音開きドア
プロサングエのリアドアには、なんと前開きのリアヒンジが採用された。いわゆる“観音開きスタイル”となる。
これは“2ドアであるべきフェラーリ”の文法を守るため、リアドアの存在感を極力減らすことが目的だ。リアのドアハンドルも、ガラス開口部のBピラー寄りにある小さな黒いノブであり、こちらもよく見ないとわからない。このドアスタイルは“ウェルカムドア”と称され、前後ドアは電動で開閉する。
リアドアのヒンジは太いワンアームによるもので、剛性感あふれるものであるが、この機構のおかげでリアの車内はかなりタイトになり、決してスペース効率はよくない。4ドア開発の経験を積んだメーカーであれば、このような難易度の高い機構の採用は考えもしなかったのではないか、と同業エンジニアたちは語る。
ロールス・ロイスのような大型のクルマに採用されることや、マツダ「MX-30」などのように補助的なリアドアとして用いられることはあっても、このクラスの背の低いフル4シーターへの採用がとてもユニークなことは間違いない。ドアをフルオープンにしたプロサングエの姿は未来的であり、座ってみたいと思わせるオーラを発していた。
なぜ、今「フェラーリのSUV」が生まれたのか?
このような一般的なSUVとしての非常識こそが、実はフェラーリの考えるところのこだわりそのものであることは、おわかりのことと思う。フェラーリというブランドにふさわしいSUVとして完成させるべく、さまざまなトライが行われ、社内でもその発売に関して侃々諤々の議論が続いたという。
フェラーリのマーケティングのトップ、エンリコ・ガリエラ氏によると、プロサングエの商品化にGOを出す大きなきっかけとなったのは、新開発されたアクティブ・サスペンション・システムの完成であったという。あらゆる路面状況に対応したスポーティなハンドリングと乗客の快適性の両立があって、初めてフェラーリのバッジを付けるにふさわしいクルマと呼べるというのが彼の説明であった。
そして彼は、こう続けた。「SUVをもっとも切望したのはほかならぬ、フェラーリ最大の株主の1人であるピエロ・フェラーリ、その人だったのです」と。「フェラーリは4ドアを出すべきではない」という声が小さくなってきたのは、間違いない。そう、時代も変わったのである。
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