このモデルも他のフェラーリと同様に、フィオラーノのテストトラックでの洗礼を受け、Fセグメントの大型セダンとしては例外的にスポーティな味付けがなされた。
しかし、まもなくフェラーリとマセラティの関係は解消され、続いてフェラーリがFCAからスピンアウトしたことで、両者の関係性は消滅した。ここで、フェラーリは4ドアを切望するロイヤリティー溢れる顧客への対応を再び考えなくてはならなくなった、というのが1つの経緯だ。
私が当連載に「フェラーリがSUV参入をもったいぶる理由」という記事を書いたのは、今から4年前のこと。当時、フェラーリのトップであった故セルジオ・マルキオンネは、フェラーリのSUVには否定的であったが、全否定していたかというとそうでもなかった。
フェラーリがSUVを開発中ということは、暗黙の了解でもあったのだ。彼ほどドラスティックな判断をする人物にとっても、フェラーリのSUV参入は難しい問題だった。
つまり、フェラーリの“純粋なスポーツカー”というブランディングポリシーと、実用を重視したSUVとは相容れないものであり、フェラーリ経営陣はそこに大いに悩んだ。「フェラーリだけはSUVを作ってほしくない」というアンチな意見を持つ顧客の声も、大きかったのだ。
「なかなかやるな、フェラーリ」
プロサングエ公式発表に先立つ9月8日、マラネッロのフェラーリ本社に世界から100名余りのジャーナリストが集結した。プロサングエの実車を披露し、ベネデット・ヴィーニャCEOをはじめとしたフェラーリ経営陣が、プロサングエのプレゼンテーションを行ったのだ。
その説明はいつも以上に力の入ったもので、その言葉の端々に「フェラーリの意図を誤解なく伝えてほしい」という想いを強く感じさせるものであった。
プロサングエの実車を目の前にした皆の評価は、きわめて高かった。それは、フェラーリが作るSUVとしてたいへん理にかなったものであり、かつフェラーリ以外の何ものでもないと想わせるオーラを発していたからだ。
「なかなかやるな、フェラーリ」はと思いつつ、筆者のアタマに浮かんだのは、フェラーリ以外は決して作ることのできない“非常識なSUV”というキーワードであった。その非常識な理由を以下述べていこう。
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