民主党は「中間選挙の呪い」を解くことができるか アメリカで問われるのはバイデンかトランプか

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もう1つ過去の中間選挙と異なるのが、ドブス判決の影響だ。同判決後、保守派が強い州「レッドステート」で人工妊娠中絶に関わる厳格な規制が導入されたことはリベラル系メディアを中心に今も報道され、批判の的となっている。

ギャラップ社の世論調査によると、アメリカ社会では政治的イデオロギーで最も多いのが中道右派だ。半世紀ほどアメリカの女性が保有していた権利を奪う最高裁判決とレッドステートの政策は、中道右派の思想から外れ、行きすぎた行為との見方が支配的だ。

上記最高裁判決以降に行われた5つの補欠選挙での民主党候補と共和党候補の得票率の差は、2020年大統領選でのバイデン氏とトランプ氏の得票率の差と比べ、いずれも改善している。たとえば、6月28日のネブラスカ州第1選挙区での補欠選挙は共和党候補が勝利したものの、得票率の差は5ポイントのみで、トランプ氏が勝利した2020年大統領選での得票率の差15ポイントと比べ10ポイントも悪化している。

人工妊娠中絶の権利は国民の大半が支持

ここ数十年、アメリカ社会がリベラルな方向に進む中、共和党は文化の変化に抵抗し民主党と衝突する「文化戦争」を繰り広げてきた。人工妊娠中絶問題も文化戦争の主要アジェンダで宗教右派を中心に共和党内を団結させるといった政治的効果があった。

しかし、中道右派の思想からも外れたドブス判決とレッドステートの政策は共和党に政治的に不利に働いている。今や女性の人工妊娠中絶の権利を国民の大半が支持しているからだ。アリゾナ州のブレイク・マスターズ上院議員候補も共和党予備選勝利後に本選対策として人工妊娠中絶に関する自身のウェブサイトの記述を改定するなど考えを軟化させている。

一方で、インフレはガソリン価格の低下もあってやや収まってきているが、バイデン政権発足時に比べると引き続き高い数値で推移している。中間選挙で経済情勢が最大の争点であることには変わらない。とはいえ、2Dの報道が増えたことで政権の経済政策の批判の報道が減っている。その結果、今回の中間選挙はバイデン氏の信任投票ではなくなりつつあり、民主党はその恩恵も享受している。

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